カラクリ妖怪儀メレオン★開発の歴史
玩具チームではプロトタイプ発表会までの1週間で数多くの案が試作、検討された。その後もそれらの案が並行して開発されているため、完全に切り分けることは難しいが、集中して検討された時期という視点で見ると概ね、ダーツを飛ばす方法を試した初期、飛ばす以外の方法を模索した中期、最終コンセプトを固めて仕上げた後期の3つに分けられる。
開発初期
初期は多くのメンバーがダーツを遠くまでかつ精度よく飛ばすという課題が困難であると感じたため、多数の「飛ばす」プロトタイプが作られた。2週目頃にはゴムを用いて射出するカタパルト方式がもっとも安定してダーツを飛ばしていたため、飛ばす機構はこの案が第一候補となっていた。
カタパルト
儀メレオン★にも採用されたカタパルト。最初は衣料用のパンツのゴムが用いられていた。発射台に溝を設けてそれをガイドとして用い、ダーツの後方に取り付けた発射用の部品を押し出すことで射出するというコンセプトは初期のころから共通である。繰り返し使用しているうちにゴムの特性が変わることを懸念し、ばね型を作ったこともあったが十分な力を得ることができず、最終的にパチンコ用のスリングゴムが採用された。
空気圧
空気圧で飛ばすという案も検討された。ペットボトルに圧縮空気をためて飛ばすいわゆるペットボトルロケットである。飛距離は出るもののダーツに対して本体が大きくなってしまうことと、軌道が不安定であることから採用には至らなかった。ペットボトルの他、炭酸水製造用の小型CO2ボンベも検討された。
ローラー
「魔改造の夜」で何かを飛ばす競技となるとしばしば用いられるローラーも試した。ダーツの羽を逃がすための溝を側面中央に設置したローラーを1対製作してモーターに直結し回転させた。轟音を響かせるローラーは迫力はあったが、カタパルト程の射出速度は出ず、本体も重くなることから、開発は休止となった。
フルメタルカタパルト
カタパルト案と同等な方針でありながら、射出にばねを用いた機構である。仮に7.5m手前に3匹のカメレオンを並べて3投放つという方針になった場合、ゴムを使った方式では同じ特性の物を3匹用意することは難しいであろうという考えから、製造性を考慮して設計された。
ガウス加速器
鉄球が磁石に引き寄せられてぶつかった時の力を使って次々と鉄球を加速させるガウス加速器。機構的な要素がいらない単純なつくりであることから検討がなされたが、ダーツを飛ばすほどの力を得ることができず、開発は休止された。
コイルガン
電磁石の力を使って金属を飛ばすコイルガン。ケーブルを伸ばしさえすれば、射出部をコンデンサをはじめとする電気的な機構部と分離できるという特性から、パンタグラフ案との相性が良いと考えられた。また電機メーカーである東芝がこの方式を使うというロマンがあった。コイル部分の形状を含め種々の検討がなされたが、カタパルトの開発速度にはかなわなかった。
開発中期
開発2週目、カタバルト方式は7.5mの飛距離を出すことができていたが、夜会会場の状態が分からないまま、精度を高めることは困難であると考えられた。そこで初期のアイデア検討において挙がってはいたものの、本格的には検討されていなかった飛ばす以外の案が検討された。
パンタグラフ式延伸機構
電車の集電装置に用いられるパンタグラフを幾重にも重ねることで長く伸びるようにした機構がパンタグラフ延伸機構である。初期には手のひらサイズのパンタグラフも作られた他、一時は先端にワイヤーを取り付け、引っ張ることで展開時の振動を抑えつつ、照準を合わせるという機構が検討されるなど、紆余曲折があった。
スライド式延伸機構
ハシゴを伸ばす機構などにも用いられるスライド延伸機構。この機構はワイヤーを引っ張るだけで伸ばすことができ、パンタグラフに比べて高さ方向の機構を小さくできるというメリットがあった。角パイプの他、省スペース化を狙ってアングルを使用したものも検討された。しかし、長く伸ばすと反りが発生し、動かなくなってしまうという課題を克服できなかった。
エアブロー方式
空気の力で風船を膨らませることで舌を伸ばす機構も検討された。初期型は商業施設などで使われる傘の袋をつなげて製作した。小さいスペースに収納できるというメリットは捨てがたかったものの、想像以上に先端のコントロールが難しく、断念された。
ドローン
ドローンのカメラで的を認識して接近し、直接ダーツを指す案も検討した。円形を視認してそれに接近させることはできたものの、当日の会場の様子が不明であることから本番でも同様に動くかが不明であるという点、およびレギュレーションとの調整が必要となることから、開発は断念された。
開発後期
伸ばす案が採用された場合、予算のレギュレーションからその機構を3つ並べることが難しい。そこで1投目にロープを取り付け、そのロープを使って2、3投目を1投目付近に刺すという案が検討された。
ロープウェイ
飛ばす、伸ばすとは異なるコンセプトとして製作されたロープウェイ。1投目のダーツに部品を取り付けてロープを通し、そのロープを手繰り寄せることによって、射出位置にある2、3投目のダーツを的まで運ぶというものであった。刺す力が弱い、治具をどうやってつけるのかといった課題は残っていたものの、1投目にリソースを集約できるというメリットがあった。
プロペラ式ジップライン
ロープウェイのダーツを刺す力が弱いという欠点を補う形で、自走式のジップラインが考案された。ドローンの予備プロペラとモーターを使って作られたプロペラ式ジップラインは的に向けて颯爽と走っていった。同じ動作を繰り返すということが困難であり、調整も難しかったことから、射出はカタパルト方式に統一された。
儀メレオン★
『カタパルト』を用いた射出機構、『パンタグラフ式延伸機構』、射出の推進力をカタパルト式に変更した『ジップライン』。そしてこれらの3つの機構を繋げる数々のカラクリを搭載して生まれた儀メレオン★。カラクリ妖怪という名の通り、複雑怪奇なモンスターとなった。