鉄道システムでは,SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)やESG(Environment,Social,Governance)の観点から,回生電力を有効活用した省エネソリューションや,停電などの非常時にも走行できる強靱なシステムのニーズが高まっている。 東芝インフラシステムズ(株)は,これらのニーズに応えるため,東芝独自の蓄電媒体であるSCiB™を用いた鉄道向け蓄電システムを,地上側の電力供給設備及び車上駆動設備のそれぞれについて製品化し,提供している。その一環として,今回,地上用には,複数の回生電力貯蔵装置(TESS)を連系運用することで,広域停電時においても非常走行が可能なシステムを沖縄都市モノレールに構築した。一方,車上用としては,エンジン動力と回生によるエネルギーをSCiB™に蓄えモーター駆動に利用するハイブリッド駆動システムを開発し,東海旅客鉄道(株)(以下,JR東海と略記)に納入した。
長期使用を前提とする社会インフラ向け蓄電池システムでは,蓄電池の劣化状態を経時的に把握して,最適な時期に保守を行うことで,機能を維持することが必要である。広範囲なSOC(State of Charge:充電状態)で運用される電力系統用途での劣化判定には,電池容量の推定が重視される。 そこで,東芝グループは,通常運用中の蓄電池システムの稼働データだけを用いて電池容量を推定する手法を開発した。この手法では,電池固有の特性情報や,運用を中断して特定パターンの充放電運転でのデータ取得などが不要なことから,ユーザーは保守時期の最適化や運用コストの低減を図ることが可能になる。稼働中の太陽光発電の変動抑制用蓄電池システムで取得した電池容量の実測値と推定値はよく一致し,交流連系蓄電池システムで直流電流値が取得できない場合でも,交流電力値を用いて電池容量を推定できることから,この手法の実用性が確認できた。