概要一覧
 
表紙イメージ VOL.71 NO.6(2016年12月)
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特集:機器の進化を支える半導体パッケージ・実装技術

巻頭言 進化を続ける東芝の半導体パッケージ・実装技術 (p.1) 本文PDF(144KB/PDFデータ)
百冨 正樹

トレンド 東芝の半導体パッケージ開発の歩みと今後の取組み (p.2-7) 本文PDF(1.66MB/PDFデータ)
千田 大丞・八甫谷 明彦

東芝は,1980年代から今日に至るまで,電子機器の進歩を支える半導体の小型化や,高速化,低熱抵抗化,高信頼性化などに合わせて,様々な半導体パッケージを開発してきた。ストレージ機器の大容量化に対応した多段積層パッケージや,自動車の電装化に対応した小型・高信頼性パッケージ,通信機器の小型化に対応した小型パッケージなど,用途に応じて異なる要求に適したパッケージで,電子機器の性能向上や小型化に貢献してきた。
今後,様々なものが高度に情報化されていくなかで,半導体の微細化技術に頼らない半導体パッケージに対する小型・高性能化の要求がますます高まっており,当社は世界をリードするパッケージの開発で,こうした要求に応えている。

半導体製品の耐ノイズ設計を支援するEMC評価・実装シミュレーション技術 (p.8-11) 本文PDF(381KB/PDFデータ)
岡野 資睦・今泉 祐介・辻村 俊博

車載を中心に電磁波ノイズによる電子機器の誤動作の防止が安全確保の観点から最重要項目として挙げられ,ECU(Electronic Control Unit)メーカーが半導体部品を選定する際に,機能,サイズ,及びコストの他にEMC(Electro Magnetic Compatibility:電磁両立性)耐性も重要な評価項目となってきている。
そこで東芝は,半導体部品のEMC耐性についての情報をいつでも提示できるように,IEC(国際電気標準会議)が規定する半導体EMC評価方法に関するIEC 61967シリーズ(EMI(電磁干渉)試験)とIEC 62132シリーズ(EMS(電磁感受性)試験)に基づいた試験環境を構築した。また,試験結果が思わしくなかった場合に原因と対策を抽出するための実装シミュレーション技術を構築し,半導体部品に問題があった場合には即座に半導体設計へフィードバックし,周辺回路に問題があった場合には顧客に具体的な対策案を提示できる環境を実現した。これにより,半導体製品の開発強化ができるとともに,EMC耐性が高いECU製品の開発にも貢献できる。

ストレージプロダクツ向けのプリント回路板開発でのDFM適用 (p.12-15) 本文PDF(440KB/PDFデータ)
石崎 聖和・石井 憲弘・梶 桂子

SSD(ソリッドステートドライブ)や,HDD(ハードディスクドライブ),SSHD(ソリッドステートハイブリッドドライブ)などのストレージプロダクツに搭載されるプリント回路板は,大容量化のために高密度実装技術が求められる。特に,コントローラなどの大型の電子部品や,プリント配線板などはその設計が工場における製造品質や生産性に影響し,不具合の是正には後戻りコストや日数が必要となる重要部品のため,設計段階における仕様の最適化が重要である。
東芝は,設計の上流段階において,シミュレーションなどを活用したDFM(Design for Manufacturability)を適用することで,はんだ接合の信頼性などの製造品質確保,プリント配線板仕様の最適化などによるコスト低減,及び製造能力への適合などによる生産性向上を実現させた。

半導体パッケージにおけるスパッタ成膜法を適用した電磁波シールド膜形成技術 (p.16-19) 本文PDF(440KB/PDFデータ)
山崎 尚・高野 勇佑・本間 荘一

モバイル情報通信端末などの小型化や高機能化の進展に伴って,電子機器メーカーでは,高密度実装基板に搭載する個々の電子部品にEMI(電磁干渉)対策を付加することへのニーズが増加している。半導体デバイス製品にも,放射ノイズ抑制効果及び耐ノイズ性に優れた電磁波シールド膜を低コストで形成するプロセスが求められるようになった。
東芝は,金属ペーストを用いたスクリーン印刷法に比べてプロセスが安定しているスパッタ成膜法を用いることで,最表面に電磁波シールド膜が形成された半導体パッケージ(以下,電磁波シールドパッケージと呼ぶ)を量産できる技術を開発した。半導体デバイス製造の前工程で用いられているスパッタ成膜装置に,半導体パッケージの裏面への成膜を防止する専用治工具を組み込むことで,高価な裏面保護用のテープが不要になり,低コストで電磁波シールド膜を形成できる。この成膜法で電磁波シールドパッケージを試作し,良好な放射ノイズ抑制効果を確認した。

TSV技術を用いた世界初の16段積層NAND型フラッシュメモリパッケージ (p.20-23) 本文PDF(329KB/PDFデータ)
松寺 克樹・河崎 一茂

近年NAND型フラッシュメモリは,ノートPC(パソコン)や,携帯電話,タブレットといった各種モバイル機器をはじめとして,ハイエンドサーバやデータセンターに用いられるSSD(ソリッドステートドライブ)など,様々なアプリケーションで使用されている。応用分野の拡大に伴い,いっそうの高速化,低消費電力化,及び大容量化が求められている。
このようなアプリケーションからの要求に応えるため,東芝は,NAND型フラッシュメモリのパッケージングに,チップ内を貫通する電極で配線するTSV(Through Silicon Via)技術を適用した。TSV技術を適用した16段積層NAND型フラッシュメモリを世界で初めて(注1)開発し,従来のワイヤボンディング方式に比べて,データ転送速度の2倍以上の向上と約50 %の消費電力削減を達成し,2015年8月に発表した。更なる大容量化を目指して,32段の積層や,3次元フラッシュメモリBiCS FLASHにTSV技術を適用する開発を進めている。

(注1)2015年8月時点,当社調べ。

小型で高い絶縁性能を確保した車載インバータ用光絶縁型IGBTゲートプリドライバ TB9150FNG (p.24-27) 本文PDF(618KB/PDFデータ)
岸 博明・堀 将彦

ハイブリッド電気自動車(HEV)や電気自動車(EV)の市場拡大に伴い,電動モータを駆動するインバータシステムの役割は今まで以上に多様化しつつある。したがって,IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などの電動モータ駆動素子を搭載するパワーモジュールや,絶縁素子,IGBTドライバなどで構成されるインバータシステムには,小型化と多機能化が要求されている。
このような要求に応えるため,東芝は,車載インバータ用光絶縁型IGBTゲートプリドライバ TB9150FNGを開発した。TB9150FNGは,絶縁素子であるフォトカプラと,IGBTドライバ用の制御回路であるプリドライバを集積したパッケージであり,インバータシステムの小型化が可能である。

カーオーディオ用4 ch パワーアンプICの小型・軽量パッケージング技術 (p.28-31) 本文PDF(490KB/PDFデータ)
関 嘉幸・細川 淳・琴川 哲健

カーオーディオセット(以下,セットと略記)のスピーカは通常4台で構成され,それぞれ独立した増幅回路により駆動される。そのため四つのアンプが1パッケージに内蔵された4チャネル (以下,4 chと略記) 増幅回路IC(以下,パワーアンプICと呼ぶ)が現在の主流となっている。東芝の4 chパワーアンプICは,当社オリジナルの先端コア技術を組み合わせ,多彩なラインアップを展開して高いシェアを確保している。一方で,車内空間を確保し,また燃費を向上させるため,セットの小型・薄型・軽量化の要求がある。
当社は,このような要求に応えるために,E-PAD(Exposed-Pad)構造のHSSOP(Shrink Small Outline Package with Heat Sink)パッケージを採用した4 ch パワーアンプICを業界で初めて(注1)開発し,小型・軽量化を実現した。

(注1)2016年3月時点,4 chパワーアンプICとして,当社調べ。

半導体部品向け超小型パッケージのローコスト化技術 (p.32-35) 本文PDF(359KB/PDFデータ)
岩上 泰之・飯田 昭男・竹内 修

タブレットやウェアラブル端末などの通信技術の進歩や多機能化に伴って,半導体部品の点数が増加し,小型・薄型化による高密度実装が求められている。東芝は,半導体部品の超小型パッケージとして0.62(幅)×0.32(長さ)×0.3(高さ) mmのSC2(以下,従来品と呼ぶ)を開発した。
更なる市場要求に応えるために,新たに従来品と同じサイズのローコストパッケージSL2を開発した。SL2は,超小型パッケージでの実用が難しいとされるスタンピングリードフレームを用いているのが特徴で,当社がこれまでに培った技術の導入と新規技術の開発により,従来品に比較して33 %のローコスト化を実現した。

IoT向けマイクロプロセッサApP Lite TZ1001を搭載した環境センシングロガー (p.36-39) 本文PDF(376KB/PDFデータ)
高山 和幸・今村 修史

物流ビジネスの分野では,貨物輸送中の状況をモニタして輸送品質を向上させたいとか,ある特定の製品の保管環境をモニタして製品品質を向上させたいといったニーズがある。東芝は,これらのニーズに応えるため,B to B(Business to Business)向けに環境情報をセンシングできる装置(以下,環境センシングロガーと呼ぶ)を開発した。
この環境センシングロガーは,オールインワンセンサであること,長時間動作が可能であること,及び防塵(ぼうじん)防水対応であることの三つの特長を備えている。すなわち,1台で温度,湿度,気圧,照度,及び衝撃の5種類の環境データをセンシングできるオールインワンパッケージである。また,当社のIoT(Internet of Things)向けマイクロプロセッサApP Lite TZ1001を搭載し,フル充電状態から約2か月間の連続稼働を実現している。更に,防塵防水仕様としてIP67(注1),耐衝撃仕様としてMIL-STD(注2)-810に対応させることで,様々な用途で使用できるようにしている。

(注1)JIS C 0920(日本工業規格 C 0920)で規定される,電気機器器具の外郭による保護等級。
(注2)米国国防総省軍用規格。



一般論文
複雑なネットワークシステムでも高いサービス品質を維持するためのデータフロー管理技術Flowganizer™ (p.40-43) 本文PDF(300KB/PDFデータ)
伊藤 俊夫・金子 雄・前川 智則

近年,工場や社会インフラ分野に高度な情報通信技術(ICT)を導入する動きが本格化している。ICTが導入されたシステムは,多種多様なデータを様々な機器で扱う複雑な構成になる一方,高いサービス品質も求められる。
東芝は,このような複雑化したシステムでも高いサービス品質を維持するための技術Flowganizer™を開発している。Flowganizer™は,システムで扱うデータの流れ(データフロー)に着目して,その品質を管理する。これにより,複数の機器を横断するデータ処理であっても,その品質を正確に捉えて保証することが可能になる。試作したFlowganizer™を実際の統合BEMS(Building Energy Management System)に適用し,複数のビルからの消費電力データに関するデータフローの処理遅延時間を分析することで,システム異常の有無と異常箇所の特定ができることを確認した。

ウェアラブル保守点検サポートシステム (p.44-47) 本文PDF(395KB/PDFデータ)
中洲 俊信・池 司・山内 康晋

電力制御盤など社会インフラ機器の保守点検では,作業員は手順書を確認しながらボタンの押下や制御スイッチの切替えといった操作を行う。その際,制御盤から視線を移して手順書を確認したり,ページを手でめくったりする動作が必要になり,作業中断による効率低下が課題となっていた。
東芝は,これまでの紙ベースの手順書を基にした保守点検業務を効率化するため,眼鏡型ディスプレイに手順書を表示し,指を傾ける操作で手順書のページを切り替えられるウェアラブル保守点検サポートシステムを開発した。作業時の誤作動を抑制するジェスチャ操作インタフェースの設計と,指に装着した加速度センサのデータから直感的な指ジェスチャを認識する技術の開発により,指ジェスチャによる手順書の確認及び操作が可能になった。これにより,手順書確認時に視線を移す必要がなくなり,作業に集中できることで保守点検業務の効率が向上することを,試作品を用いた評価実験で確認した。

超低インダクタンス化により高速スイッチングを可能にしたSiCパワーモジュール (p.48-51) 本文PDF(328KB/PDFデータ)
高尾 和人・京極 真也

炭化ケイ素(SiC)パワーデバイスは,現行のシリコン(Si)パワーデバイスに比べて低損失かつ高速スイッチング動作が可能であることから,次世代のパワーデバイスとして期待されている。SiCパワーデバイスの高速性を最大限に引き出し,回路特性の向上を図るには,スイッチング速度を制約する回路の寄生インダクタンスの低減が必要である。
東芝は,回路の寄生インダクタンスを大幅に低減できる独自構造のSiCパワーモジュールを開発した。これにより,従来構造のSiCパワーモジュールに比べて,回路の寄生インダクタンスを約85 %低減するとともに,スイッチング損失を約47 %低減できることを,試作と評価により実証した。超低インダクタンスSiCパワーモジュールの適用により,電力変換装置の省エネ化,小型化,及び軽量化に向けた更なる進展が期待できる。

対称型キャリアを用いたPWMによるPMSMの低速駆動域での位置センサレス制御方式 (p.52-55) 本文PDF(356KB/PDFデータ)
前川 佐理・柴野 勇介・長谷川 幸久

永久磁石同期モータ(PMSM)は誘導モータに比べて高効率であることから,様々な分野への普及が進んでいるが,小型化とコスト低減のため,一般にPMSMの駆動に必要な磁極位置センサを使用しない構造が求められている。こうした背景の下,様々な位置センサレス制御方式が検討されているが,この中で特にPMSMを低速で駆動する領域では,PMSMにテスト電圧を印加し,そのときのモータ電流を検出することで磁極位置を推定する,INFORM(Indirect Flux Detection by Online Reactance Measurement)方式などの方法がある。しかしこの方法では,テスト電圧の印加によって発生する騒音が問題であった。
そこで東芝は,テスト電圧を印加することなく,PMSMを駆動するためのPWM(パルス幅変調)電圧波形を対称型キャリアを用いて生成することで磁極位置を推定する,低速駆動域での新しいセンサレス制御方式を開発した。実験により,低速駆動域での良好なセンサレス制御と低騒音化を実現できることを確認した。

QCDSを踏まえたサプライヤーコントロールによる部品製造技術の強化 (p.56-59) 本文PDF(345KB/PDFデータ)
唐沢 純・西川 昭一・大村 美央

東芝は従来,電子機器・装置製造の基本的な要素である樹脂成形部品や,板金プレス部品,実装基板などの製造技術を社内で開発し,技術の高度化や生産性の向上などに取り組んできた。しかし近年,部品コスト低減のため,海外,特に中国や東南アジアのサプライヤーとの連携が重要になってきており,海外ローカルサプライヤーの技術レベルの向上や,人件費の高騰,為替変動などに対応してQCDS(Quality:品質,Cost:コスト,Delivery:納期,Service:サービス)を適正化するためのサプライヤーコントロールが必要になっている。
そこで当社は,中国市場を念頭に,内製で培ってきた技術やノウハウを活用してサプライヤーソーシングを効率化し,内製及び外製の部品製造技術の強化に取り組んでいる。

製造拠点が抱える課題の自律的改善を促進する現場力強化ツールの開発 (p.60-63) 本文PDF(431KB/PDFデータ)
西村 圭介

IoT(Internet of Things)といった新たな概念の導入が検討される製造拠点では,製造進捗情報の継続的なデータ収集と生産管理の見える化といった共通的な課題がある。
東芝は,これらの課題を解決するため,製造情報収集を目的として時間分析負荷削減ツール及び製造情報収集ツールを,業務プロセス分析を目的として巻紙作成補助ツール及び業務プロセス評価ツールを開発した。これら四つのツールの開発にあたっては,製造拠点にとって導入ハードルとなるコストを抑制するとともに,段階的な導入やトライアルがしやすいようにツール単体での動作も可能な構成にした。これらのツールを導入し活用することで,課題の把握がしやすくなり製造拠点の自律的な改善が期待される。

マレーシア ジマイースト石炭火力発電所敷地の浚渫埋立工事を完了 (p.64-68) 本文PDF(514KB/PDFデータ)
余語 雄司

東芝は,マレーシア ジマイースト石炭火力発電所(1,000 MW×2台)の建設工事をEPC(設計,調達,建設)契約に基づいて進めており,超々臨界蒸気タービン,発電機,及びそれらの補機類を納入する他,変電設備の納入や海洋土木工事も担当している。海洋土木工事には,発電所敷地全体の浚渫(しゅんせつ)埋立工事が含まれる。埋立ては,TSHD(Trailing Suction Hopper Dredger)により発電所沖合いの海底から浚渫した海砂を用い,5か月にわたり実施した。その間に敷地全体から地下水をくみ上げる工事も行い,敷地全体の埋立工事を2015年12月に完了した。
埋立て終了後は約3か月間掛けて敷地全体を沈下させ圧密させることで,仕様書の圧密基準を満足させた。2016年4月には陸上土木工事を担当する韓国の現代エンジニアリング社と現代建設社のJV(以下,現代JVと略記。JV:ジョイントベンチャー)へ,発電所敷地の主要部分である発電エリアを予定より2週間早く引き渡して,その後の工程に余裕を持たせることができた。

新電力向け電力需給管理システム (p.69-72) 本文PDF(393KB/PDFデータ)
岡山 仁・豊嶋 伊知郎・和田 幸祐

一般家庭を含む低圧需要家への電力販売が2016年4月に解放されたことで,わが国の電力小売は全面的に自由化された。従来電力小売を行ってきた旧 特定規模電気事業者(以下,新電力と呼ぶ)や旧 一般電気事業者に加えて,様々な企業が小売への参入を検討している。全面自由化後の新電力は,計画値同時同量制度への対応や新規顧客である大量の低圧需要家の需要予測が可能なシステムを必要としている。
東芝は長年培ってきた電力需給管理技術を生かし,全面自由化後の新電力向け電力需給管理システムを開発した。このシステムは,新たに自由化対象となった低圧需要家の需要予測機能を中心に,太陽光発電(PV)などの再生可能エネルギーによる発電量の予測機能や,需要調達計画など各種計画の作成機能,同時同量監視機能などから構成される。更に,先進的な需要抑制手段として,デマンドレスポンス(DR:Demand Response)機能も備えている。

セルビア郵政公社 郵便自動処理システム (p.73-76) 本文PDF(390KB/PDFデータ)
関根 弘義・入江 文平・金森 一也

セルビア郵政公社では,東芝がターンキー契約で三つの主要な郵便区分局に納入した郵便自動処理システムが2015年12月から実運用に入った。
全体のシステムは,郵便区分機4台,小包・大型郵便区分機1台,OCR(光学式文字読取装置)及びBCR(Bar Code Reader)の認識処理とVCS(Video Coding System)を集中化した統合OCRV(Optical Character Recognition and Video Coding)システム,稼働データや運用計画を管理するIT(情報技術)システム,及び大口事業者から受け入れる大量の郵便物の数量を計測して料金の妥当性を検証する収益保護システムから構成される。今回のプロジェクトは,セルビア初の郵便自動処理システムの導入であったことから,システム運用開始後の運用方法や組織体制などの計画を早期の段階で作成し,セルビア郵政公社と連携して入念な準備作業を進めた。また,最新のディープラーニング(深層学習)手法を用いたOCR技術を投入することで目標の認識率である92 %以上を達成した。更に,三つの郵便区分局に分散した区分機器からの情報は統合OCRVシステムを設置した1局で集中管理することとし,各局をWAN(広域通信網)で接続する方式により実現させた。

SiCパワーデバイスを適用した無停電電源システム TOSNIC™-S1400 (p.77-80) 本文PDF(398KB/PDFデータ)
末吉 暁・松岡 一正

近年,ネットワークサーバや通信機器を中心とした情報・通信システムの安定稼働が,人々の日々の生活で必要不可欠となってきている。万一,情報・通信システムの停止といった不測の事態が発生すれば社会活動への影響は計り知れない。無停電電源システム(UPS)は,このような情報・通信システムを支える電気設備として導入されており,その役割はいっそう重要になっている。高い給電信頼性とともに,ライフサイクルコストを低減するための高効率・省メンテナンス化や,省スペースを実現するための小型・軽量化が求められる。
東芝は,これらの市場ニーズを踏まえ,次世代の半導体デバイスとされるSiC(炭化ケイ素)パワーデバイスをコンバータ及びインバータの変換回路に適用したUPSの開発を進めており,今回,給電信頼性と付加価値の高いTOSNIC™-S1400を製品化した。

LED投光器を備えた野球場で起こるボール消失現象の評価技術 (p.81-84) 本文PDF(385KB/PDFデータ)
東 洋邦・佐々木 淳・秦 由季

野球場の照明設備は,これまでHID(高輝度放電)ランプの投光器を用いた照明設計が主流であったが,近年,LED(発光ダイオード)の高効率化と大光量化によって,LED投光器への置換えが進んでいる。その一方で,LED投光器を備えた照明柱を設置した野球場では,ボールが照明の発光面に重なると消えて見えなくなるボール消失現象が起こると言われ,選手や野球場関係者に不安感を与えている。
東芝ライテック(株)は,実際の野球場でのフィールド実験や照明が制御できる環境での室内実験により,ボール消失現象に影響を与える照明要因を明らかにするとともに,ボール消失現象を評価できる指標を開発した。今回得られた評価指標を用いることで,ボール消失現象に配慮した野球場の照明設計が可能になった。



R&D最前線
高速かつ高精細な金属3Dプリンタ (p.86-87) 本文PDF(255KB/PDFデータ)
塩見 康友

独自の造形ノズルで359 cm3/hの高速造形を実現
東芝と東芝機械(株)は,従来よりも高速な造形を実現する金属3D(3次元)プリンタの試作機を共同開発しました。
レーザ方式の金属3Dプリンタでは,造形速度の向上が大きな課題でした。そこで,試作機では,一般のパウダベッドフュージョン方式に替えて,ノズルから金属パウダを噴射すると同時にレーザ光を照射することで金属パウダを溶融,凝固させて造形を行うレーザメタルデポジション(LMD)方式を採用し,高速化しました。
また,造形速度を更に向上させるために出力6 kWのレーザを適用し,高精細造形のために流体シミュレーションを活用して高収束ノズルを開発しました。その結果,359 cm3/hの造形速度と0.3 mmの造形幅を実現しました。

 

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