概要一覧
 
表紙イメージ 2015 VOL.70 No.12
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環境創造に向けたヒートポンプ技術の応用

巻頭言 市場拡大が進むヒートポンプ応用製品の展望 本文PDF(142KB/PDFデータ)
久保 徹

トレンド ヒートポンプ技術で地球環境負荷の低減に貢献する空調機,給湯機,及び熱源機の技術動向 本文PDF(753KB/PDFデータ)
鈴木 秀明

近年,空調機,給湯機,及び熱源機(以下,空調機器と呼ぶ)では,コンプレッサ,インバータ,及び冷凍サイクル技術をコア技術として省エネ性の高い製品が開発されている。空調機器に用いられているヒートポンプ技術は,わが国や欧州では重要な再生可能エネルギー利用技術の一つに位置づけられ,省エネに貢献するだけでなく二酸化炭素(CO2)の排出量削減が期待され,民生分野だけでなく産業分野でも製品が開発されている。
東芝キヤリア(株)は,地球環境負荷の低減に貢献するため,ヒートポンプ技術を軸に,グローバル市場向けに省エネ性の高い空調機を製品化するとともに,産業分野向けにCO2排出量を低減させた高効率熱源機の製品化に取り組んでいる。

グローバルな顧客要求に対応するビル用マルチエアコンシステム“SMMS-eシリーズ” 本文PDF(497KB/PDFデータ)
北野 竜児・山根 宏昌・稲田 裕治

ビル用マルチエアコンシステムはグローバル市場での需要拡大が続いているが,更に市場を増やすためには,各地域独自の顧客要求に積極的に対応していくことが重要である。
東芝キヤリア(株)は,“SMMS-eシリーズ”をグローバル共通の要求であるトップクラスの省エネ性能と省資源化技術を備えたプラットフォームとして,地域競争能力を高めた製品を開発している。欧州向け機種には連続暖房機能を搭載し,中東向け機種では冷房運転可能外気温度の上限を従来の43 ℃から52 ℃に拡大するなど,各地域の顧客要求に応えている。

省エネと付加価値向上を可能にした空冷ヒートポンプ式熱源機“ユニバーサルスマートX 3シリーズ” 本文PDF(477KB/PDFデータ)
室井 邦雄・海野 浩一・青木 俊公

近年,地球環境への負荷低減が重視されるなかで,空調機器にも更なる高効率・高性能・高機能化が求められている。
東芝キヤリア(株)は,業界最高(注1)の高効率運転を達成するとともに,高調波抑制機能の強化と99 %の力率を業界で初めて(注2)実現した高付加価値製品として,モジュール型の新しい空冷ヒートポンプ式熱源機“ユニバーサルスマートX 3(USX3)シリーズ”を開発した。これにより,いっそうの省エネ化だけでなく,インバータ熱源機導入に際しての高調波抑制設備や電源供給設備の増強を抑えることにより設置スペースや工事コストを抑制でき,様々な現場で,熱源システムのインバータ化による省エネをより安心して推進できる。

(注1)2015年1月現在,空冷ヒートポンプ式熱源機において,当社調べ。
(注2)2015年1月時点,空冷ヒートポンプ式熱源機において,当社調べ。

省エネ性向上と運転時の室外温度範囲拡大を実現した国内店舗・オフィス用エアコン“ウルトラパワーエコシリーズ” 本文PDF(454KB/PDFデータ)
中野 秀一・青藤 誠哉・我科 賢二

東芝キヤリア(株)は,国内向け店舗・オフィス用エアコンとして,「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(省エネ法)の2015年基準値を大きく上回る業界トップクラスの省エネ性を実現するとともに,冷暖房時の運転可能室外温度範囲を大幅に拡大(冷房時室外温度上限52 ℃,暖房時室外温度下限–27 ℃)した,“ウルトラパワーエコシリーズ”を開発した。冷媒には,現在主に採用されているR410AよりもGWP(地球温暖化係数)の小さいR32を採用した。また,天井カセット形4方向吹出しタイプの室内ユニットも,フルモデルチェンジにより省エネ性を向上させるとともに,天井パネルの厚さを業界最薄(注1)の30 mmとし,直線と直角線で構成したデザインを採用することで快適な空調空間を実現した。

(注1)2015年1月現在,当社調べ。

省エネトップランナー基準を達成した家庭用CO2ヒートポンプ給湯機“ESTIA 4シリーズ” 本文PDF(388KB/PDFデータ)
安藤 史弥・若月 一仁・矢口 正彦

高効率が特長の家庭用CO2(二酸化炭素)ヒートポンプ給湯機は,2013年3月に省エネトップランナー特定機器に指定された。更なる省エネ性能の向上が求められており,業界を挙げて省エネ化に取り組んでいる。
東芝キヤリア(株)は,平成26年度省エネ大賞を受賞した“ESTIA 3シリーズ プレミアムモデル”に採用した独自の省エネ技術を全機種に展開し,家庭用CO2ヒートポンプ給湯機“ESTIA 4シリーズ”を開発した。このシリーズでは,湯を作る効率と熱を利用する効率を更に向上させ,全機種でトップランナー方式に基づく2017年度目標の省エネ基準を2年前倒しで達成した。

温排熱や未利用エネルギーを活用する熱回収型ヒートポンプ熱源機 本文PDF(343KB/PDFデータ)
松下 馨・森田 健・松本 雄紀

二酸化炭素(CO2)の排出量削減を目的に,これまでの燃焼式熱源機から熱源を転換し,電気が動力のヒートポンプ技術を用いた熱回収ヒートポンプ“熱回収CAONS”を開発した。インバータ駆動ツインロータリコンプレッサ及びR134a冷媒を採用し,これまで廃棄していた熱などを熱源として利用することで最高85 ℃の温水取出しが可能で,燃焼式熱源機に比べCO2排出量とランニングコストが削減できる。また,モジュール連結設計とすることで,一体型の熱源機に比べリスク分散をしながら最適な容量選定ができ,負荷増加時の熱源機増設にも容易に対応できる。更に空調用として,地下水などを利用し,温水と冷水とを切り替えて取り出せる熱回収ヒートポンプ“熱回収SFMC”を開発した。



一般論文
パーセルCIMを用いた電力システム設計技術と送配電SCADA・EMSプラットフォームへの適用 本文PDF(302KB/PDFデータ)
王 蘭・牧野 重幸・村山 廣

スマートグリッド関連技術の普及や国内電力完全自由化に向けて,異なる電力システム間の情報交換がより頻繁に行われるようになってきた。異なる電力システム間のデータ交換を実現するため,電力システムが共通して利用できるUML(Unified Modeling Language)を用いた共通情報モデル(CIM:Common Information Model)がIEC(国際電気標準会議)により構築されている。
東芝は,従来の標準CIMの,要素ごとにバージョン管理ができない,モデルとデータを統合して編集できないなどの問題を解決するため,国際規格IEC 62656-3を提案し,表形式を用いた標準データモデル(パーセルCIM)を構築した。またこの技術を応用して,標準CIMに準拠したDB(データベース)を設計,構築,及び保守するためのフレームワークparcimoserを開発し,当社の送配電SCADA(Supervisory Control and Data Acquisition)・EMS(Energy Management System)プラットフォームに搭載した。これにより,このプラットフォームは標準CIMにも対応でき,複数ベンダーの既開発品が共存する電力システムへの適用が可能になった。

生産シミュレーション技術の健診サービスへの適用 本文PDF(489KB/PDFデータ)
杉山 尚美・名富 知・手島 文彰

東芝グループが注力事業領域の一つと位置づけているヘルスケア事業は,従来の“診断・治療”を中心に“予防”,“予後・介護”,及び“健康増進”までを含めたトータルソリューションの提供を目指しており,診断・治療用機器などの“モノ”から,それから生まれる“こと”を真の価値と捉えた“モノ+こと”へとシフトして,新しい付加価値を創出することに取り組んでいる。
今回,予防領域では,人間ドックや定期健診などの検査待ち時間を短縮することを目的に,これまでモノづくりの生産設計や業務改善に活用してきた生産シミュレーション技術を適用して,次検査を決定する健診順路の適正化手法を構築した。健診施設の健診実績データを用いてその有効性と,生産ラインにおける課題解決ノウハウのサービス分野への活用可能性を確認した。

放射線環境下での作業員の被ばく低減に向けた4足歩行ロボット2台の協調動作による荷物運搬技術 本文PDF(595KB/PDFデータ)
上田 紘司・菅沼 直孝・中村 紀仁

東京電力(株)福島第一原子力発電所の廃炉に向けた作業のいくつかは高放射線環境下で行われることから,作業機材や工事資材の運搬のような単純作業は人に代わって遠隔操作装置で行い,作業員の被ばくを低減する必要がある。
東芝は,機材を積載して運搬できる4足歩行ロボットを開発し,建屋内の調査作業に活用してきた。今回,新たに2台の4足歩行ロボットを協調動作させて荷物を運搬する技術を開発することで,配管のような長尺重量物を運搬できるようにした。2台の動作を同期させ,各ロボットの歩行安定性を確保しながら2台間距離を一定に保つ制御技術を開発し,建屋内の通路を想定した100 mmの段差がある床面上で長さ2 m,質量45 kgの配管を運搬して荷降ろしできることを確認した。

コロンビア ソガモソ水力発電所の水車発電機 本文PDF(451KB/PDFデータ)
木下 賢太郎・石塚 博明・東條 裕宇

南米のコロンビアは豊富な水資源に恵まれ,電源構成における水力発電の占める割合が高い。首都ボゴタから北に位置するイサヘン電力会社 ソガモソ水力発電所は,水車発電機3台を持ち,最大出力820 MWで,同国内電力需要の8.3 %に相当する能力があり,2014年12月に営業運転を開始した。
東芝は,受注から約5年にわたるプロジェクトで日本,中国,北米,及びコロンビアの各拠点が連携し,同国最大となる水車発電機を完成させた。これにより,当社が同国に納入した水車発電機の総発電出力は同国内水力発電出力の約45 %を担うことになり,同国が再生可能エネルギー発電として推進する水力発電所の開発に貢献している。

台湾 澎湖島のスマートグリッドシステム向けμEMS 本文PDF(463KB/PDFデータ)
コー メイ リェン

近年,再生可能エネルギーの導入が進み,電力需要を独自に賄う島嶼(とうしょ)ではエネルギー利用の効率化が求められ,特に水道や,鉄道,電力網など既存の社会インフラが整う都市部ではスマートグリッドの導入が注目されている。台湾 澎湖島では,将来海底ケーブルによって台湾本島と系統接続された場合の,離島における電力需給を監視制御するエネルギーマネジメントシステム(μEMS)の構築を目指し,スマートグリッド実証プロジェクトが工業技術研究院(ITRI:Industrial Technology Research Institute)によって進められている。
東芝はこのプロジェクト用に電力需給を管理するメインプラットフォームであるμEMSを開発して納入した。μEMSは,再生可能エネルギー発電予測機能と発電計画機能を用いて,同島に導入された蓄電池システム(ESS)と太陽光発電(PV)設備のインバータを制御し,配電系統における電圧制御,PV出力変動の補正,及び同島に導入された再生可能エネルギーの最適利用を実現する。

プライバシーを保護する匿名化技術 本文PDF(330KB/PDFデータ)
小池 正修・パキン オソトクラパヌン・伊藤 秀将

近年,パーソナルデータを利活用して商品やサービスに様々な付加価値を提供するビジネスモデルが増加するなかで,プライバシーを保護するための匿名化技術が注目されている。その中でもk-匿名化技術は,個人を特定しようとしてもk 人までしか絞り込めないという特長を持つ有力技術である。その一方で,k-匿名化すると,元のデータの多くの値が変更されて情報量が失われるため,データの有用性が低下するという問題があった。
東芝は,従来技術に比べ情報量の損失が約30 %少ないk-匿名化アルゴリズムを開発した。このアルゴリズムを適用して作成した匿名化データを用いることで,プライバシーを保護しながらより精度の高いデータ利活用を実現できる。



R&D最前線
レグザの高画質ハイダイナミックレンジ表示技術 本文PDF(254KB/PDFデータ)
新井 隆之

テレビ映像のリアリティ,立体感,精細感を大幅に向上
近年,大画面テレビの主流は,フルHD(1,920×1,080画素)テレビから4K(3,840×2,160画素)テレビへと移行しつつあります。また,ディスプレイ技術の進歩によって,高輝度と広色域を特長とするテレビが多数発売されるようになってきました。こうしたなかで,4K対応の次世代ブルーレイディスク(†)規格Ultra HD Blu-rayTM(†)では,ハイダイナミックレンジ(HDR:High Dynamic Range)への対応が決まりました。
東芝は,HDRが持つ輝き感とコントラスト感を最大限に表現するとともに,従来のコンテンツでもHDRの映像であるかのように表現する“ハイダイナミックレンジ復元”技術を更に進化させ,4Kテレビ レグザZ20Xシリーズに搭載しました。

・Blu-ray DiscTM(ブルーレイディスク),Blu-rayTM(ブルーレイ),Ultra HD Blu-rayTMは,Blu-ray Disc Associationの商標。

 

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