概要一覧
 
表紙イメージ 2015 VOL.70 No.6
英文ページへ

快適なライフスタイルを実現する家電製品のスマート化技術

巻頭言 進化する家電製品の現状と今後 本文PDF(126KB/PDFデータ)
安木 成次郎

トレンド 家電製品を通してユーザーに提供する“モノ+こと”に対する東芝の取組み 本文PDF(582KB/PDFデータ)
紺田 和宣・小嶋 健司

これまで,テレビや,冷蔵庫,洗濯乾燥機,掃除機などの家電製品では,番組視聴や,食品保管,洗濯,清掃といったそれぞれの機能の向上が行われてきた。近年,これらの家電製品では,ネットワーク機能を搭載することにより,スマート化が実現されている。

東芝は,家電製品による快適なライフスタイルの実現に向け,ネットワーク技術とクラウドコンピューティング技術を利用したスマート化により,“モノ”(製品)としての主たる機能による価値の提供から,“モノ+こと”としての製品を利用することによる体験的価値の提供に取り組んでいる。

テレビの利用スタイルを変える対話処理技術 本文PDF(393KB/PDFデータ)
向出 隆信・河村 聡典・井澤 秀人

レグザシリーズに搭載された“タイムシフトマシン”機能でテレビ番組を録画することにより,番組を見逃すことなく視聴できるようになった。しかし限られた時間の中で,録画された全ての番組を見ることは困難である。そこで,ユーザーが見たい番組へすばやくたどりつける機能の実現が求められている。

東芝は,より的確で効率的な番組視聴ができるように,ユーザーが見たい番組をすばやく探し出せる“ざんまいスマートアクセス”機能に加え,対話処理技術をテレビに適用してざんまいスマートアクセス機能の利便性を更に高めた“ざんまいスマートアクセスボイス機能”を実現し,4K(3,840×2,160画素)テレビ レグザZ10Xシリーズに搭載した。

録画機器を意識しない番組視聴を実現するタイムシフトリンク機能 本文PDF(301KB/PDFデータ)
鬼頭 利之・入江 祐司・吉田 治

家庭内の複数の録画機器に分散して保存された多くの録画番組の中から視聴したい番組を視聴するためには,その番組がどのテレビやレコーダに録画されているかをあらかじめ把握しておかなければならない。また,複数チャンネルの番組を録画し一時保管できる“タイムシフトマシン”機能で録画予約なしに番組が楽しめるようになったものの,タイムシフトマシン機能を搭載したテレビやレコーダは限られていた。

そこで東芝は,ユーザーが,どの機器に録画したかを意識することなく録画番組を視聴できる機能を開発し,“タイムシフトリンク”機能として当社製液晶テレビ レグザZ10Xシリーズ及びJ10Xシリーズに搭載した。更にこの技術によって,タイムシフトマシン機能を搭載していない当社製液晶テレビでもタイムシフトマシン機能を搭載した当社製レコーダとネットワーク接続することにより,タイムシフトマシン機能を簡便に利用できるようになった。

テレビやタブレットを用いたスマート家電連携サービス 本文PDF(405KB/PDFデータ)
齋藤 啓司・平山 紀之

東芝グループは,2002年からホームIT(情報技術)システム FEMINITY事業を推進してきた。通信機能を搭載したネットワーク家電を製品化し,ユーザー向けサービスとして“フェミニティ倶楽部”を運営してHEMS(Home Energy Management System)の普及に貢献するとともに,日々の暮らしを豊かにすることを目的としている。

更なる利便性向上を目指して,2013年からは新たにクラウドサービス“家電コンシェルジュ”につながるスマート家電をリリースした。経済産業省が推奨するHEMS標準インタフェースであるECHONET Lite(†)を利用し,テレビ(TV)やタブレットをコントローラとしてスマート家電と連携させ,それぞれの機器の特徴を生かした新サービスを実現している。

・ECHONETLiteは,一般社団法人 エコーネットコンソーシアムの商標。


スマートロボットクリーナーによる“家電コンシェルジュ”サービスの拡大 本文PDF(436KB/PDFデータ)
古田 和浩・丸谷 裕樹・阿部 功一

東芝グループは,冷蔵庫,ドラム式洗濯乾燥機,及びエアコンをクラウドサーバとつないで,外出先から冷蔵庫内をチェックしたり,洗濯乾燥機のフィルタの詰まりを通知したり,エアコンの遠隔操作で部屋の温度の確認や調整をしたりなど,便利で快適な暮らしをサポートする“家電コンシェルジュ”サービスを展開している。

今回,新たにスマートロボットクリーナー VC-RCX1をラインアップに加えた。外出先からでもスマートフォンでVC-RCX1を操作したり,運転状態を確認したりできる。また,ロボットクリーナーが部屋の中を移動できる唯一の家電製品であることに着目し,所定の場所で旋回して周囲を360°撮影できるカメラ機能を搭載した。スマートフォンで留守宅の部屋のようすを確認できる。

スマート家電の遠隔制御技術 本文PDF(307KB/PDFデータ)
江坂 直紀・安次富 大介

インターネットを通じて機器どうしがつながり新たな価値を生み出す時代が到来しようとしている。スマート家電をはじめとするIoT(Internet of Things)機器の普及に伴い,時間や場所を問わずに機器の状態監視や制御を行いたいというニーズが高まっている。

東芝は,これまでのスマート家電の開発を通して得たノウハウを基に,インターネット対応の機器を遠隔地から効率的に制御するクラウド集約型の遠隔制御システムを開発した。これを実現するために,インターネット上の通信システムは,標準的なプロトコルを利用することにより双方向通信の接続性と安全性を確保し,将来的に機器の収容台数が大幅に増えても,通信遅延を増加させないスケーラビリティを備えている。



一般論文
“好ましさ”に基づいたLED照明の演色性評価技術 本文PDF(418KB/PDFデータ)
今井 良枝・小谷 朋子・渕田 隆義

テレビやカメラ,印刷機など,色再現が重要な製品は数多く,それぞれに適した色づくりがある。色づくりの際には,人が好ましく感じるように色を再現する人中心の設計も求められている。照明分野では,これまで色を忠実に再現する評価が中心であったが,設計自由度の高いLED(発光ダイオード)照明の普及に伴い,人が感じる“好ましさ”の評価も必要とされている。

東芝は,様々な分光分布を持つLED照明の下で,日常生活になじみのある食べ物などを対象に主観評価を行い,色の鮮やかさや明るさが好ましさに関係していることを明らかにした。また,その結果を基に,照明の好ましさの主観評価と相関の高い評価指標を構築した。今回得られた評価指標は,今後のLED照明の色彩設計に活用されると期待できる。

肌画像からの色素量推定技術 本文PDF(402KB/PDFデータ)
森内 優介・三田 雄志・金子 敏充

しみやそばかすなどの色素沈着は肌の悩みの一つであり,自宅でのスキンケアが注目されている。肌の状態を正確に把握するために,肌に沈着する色素量を手軽に測定する技術が求められているが,従来の技術は照明の影響を受けやすいため,測定時の照明環境に制約があるという問題がある。

東芝はこれを解決するために,解析対象とする肌の局所領域で照明やカメラの外的変動が少ないことを利用して肌に沈着する色素量を推定する技術を開発した。この技術は,広範囲の肌の色素沈着量を,一般的なカメラだけを使用して照明環境にロバスト(頑健)に精度よく推定できることから,手軽で高精度な肌解析が実現できる。

音声つぶやきSNSTMの製造現場への適用 本文PDF(455KB/PDFデータ)
知野 哲朗・上野 晃嗣・宮森 翔子

東芝は,医療・介護現場における多職種従業者間の円滑なコミュニケーションを実現する“音声つぶやきSNSTM”を2014年に製品化した。そこで使われる技術は,昇降機などの保守現場でも活用されている。

今回,この技術の更なる活用拡大を目的として,その改良版の製造現場への適用を試みた結果,安全パトロール業務や製品製造業務において,この技術を有効に活用できることを確認した。特に製品製造業務では,作業状況の記録に加えて製造現場全体の業務進行状況の相互把握や,設計部門や保守部門など製造現場外の関連部門との情報共有に有効である。また製造現場環境で生じる課題として,高い環境雑音への対応や,ハンズフリー性及びアイズフリー性の必要性などが洗い出され,これらを解決するためヘルメット装着型の補助HI(ヒューマンインタフェース)デバイスを試作し,現場試行によってその有効性を確認した。

フリーゲージトレイン新試験車両用電機品 本文PDF(600KB/PDFデータ)
森 学人・高尾 剛広・金光 修平

東京と新大阪を結ぶ東海道新幹線が開業してから2014年で50年目の節目を迎え,更なる鉄道ネットワークの拡大と幹線交通の多様化実現を目指し,整備新幹線の建設が進みつつある。北陸新幹線が2015年3月に長野−金沢間の開業を迎え,北海道新幹線では新青森−新函館北斗間の試験走行が始まった。同じ整備新幹線として九州の武雄温泉−長崎間は,フリーゲージトレイン(以下,FGTと呼ぶ)を前提に建設が進められている。

東芝は,1998年に完成したFGT 1次試験車から電気システム幹事メーカーとして携わり,実用化に向けた次期試験車両であるFGT新試験車両の製作にも参画した。主回路システム機器をはじめとして,補助電源システム機器,情報制御システム機器,保安システム機器を一括して納め,新しいタイプの新幹線であるFGTの実用化に向けた開発に大きく貢献している。

革新的なモノづくりプロセスと高付加価値を生み出す分子接合技術 本文PDF(412KB/PDFデータ)
八甫谷 明彦・鈴木 大悟・林 芳如・森 邦夫

モノづくりのなかで,モノとモノをつなぐ接合技術はもっとも重要な基盤技術の一つであり,様々な分野で利用されている。プリント配線板における導体と絶縁体の接合の界面結合力は,凹凸を利用したアンカー効果(注1)や,分子間力や水素結合といった二次結合力などで得ている。しかし凹凸があることで高精細パターンの形成が阻害され,高周波領域では表皮効果のために伝送損失が増大するという問題がある。

そこで東芝は,被着体に分子1層を化学的に結合させて材料表面全体を同一化し,強固に接合できる分子接合技術を適用した。この技術を用いて,平滑なポリイミドフィルム上へ直接銅めっきすることでメタライズし,高性能で安価なフレキシブルプリント配線板(FPC)を開発し,製品へ展開した。

(注1)接着において,材料表面の微細な凹凸に接着剤が入り込んで硬化することにより,密着力が高まる効果。

セカンドバッテリーを搭載した2-in-1タイプのノートPCに適した充放電制御技術 本文PDF(337KB/PDFデータ)
矢頭 伸介・堀江 裕・筒井 友則

近年,ノートPC(パソコン)市場では1台でノートPCとタブレットの二役を可能にする2-in-1と呼ばれるノートPCのシェアが増加している。タブレットとキーボードドックの両方にバッテリーを搭載することで,長時間のバッテリー駆動が可能になる。一方で,ノートPCスタイルでの使用時には,タブレットのバッテリー(以下,メインバッテリーと呼ぶ)ではなくキーボードドックのバッテリー(以下,セカンドバッテリーと呼ぶ)から放電して電源供給することで,タブレットを取り外したときのメインバッテリーでの駆動時間を確保しておく仕組みなど,使用状況に応じたバッテリーの充放電制御が欠かせない。

東芝は,セカンドバッテリーを搭載した2-in-1タイプのノートPC向けに,充電時間を短縮させるバッテリー同時充電技術,使い勝手を向上させるバッテリー放電切替え技術,及びバッテリーの長時間駆動を実現する省電力技術を開発し,2-in-1 Ultrabook(†) PC dynabook R82に適用した。

・Ultrabookは,Intel Corporationの米国及びその他の国における商標。


大光量と低消費電力を実現する舞台・スタジオ用LED照明器具 本文PDF(421KB/PDFデータ)
大野 貴之・徳原 直人・羽生田 有美

近年,発光ダイオード(LED)を用いたLED照明器具の普及が進んでいる。しかし,舞台・スタジオ用の演出空間照明では白熱電球の一種のハロゲンランプが主流であり,省電力化の流れに相反し大電力を必要とすることから,大光量のスポットライトのLED化が熱望されている。

東芝ライテック(株)はこれに応えて,従来のハロゲン1 kW相当以上の大光量と演出空間で必須となる高演色,むらの少ない配光,及び静音性を実現し,ハロゲン1 kW器具の置換えが可能なLEDスポットライトを開発した。開発したLEDスポットライトの消費電力は237 Wと,従来のハロゲン1 kWスポットライトに比べて約76 %の消費電力削減を図り,大光量と低消費電力を両立させている。



R&D最前線
カメラの視界から一時的に隠れても追跡可能な人物追跡技術 本文PDF(579KB/PDFデータ)
ファン クォク ヴェト

人物の位置や,速度,見た目の情報を基に動的に移動軌跡を統合
カメラを用いて複数の人物を追跡する技術は,セキュリティ監視やスポーツ解析などに利用が広がりつつあります。混雑していると人物どうしのすれ違いなどによる一時的な隠れが発生するため,追跡し続けることが難しくなります。近年,同一人物を時系列の画像(動画)全体の情報を用いて追跡する手法が提案されていますが,動画全体の処理が終わるまで結果が出ないため,遅延時間が長いという問題がありました。
そこで東芝は,撮影時に人物の隠れが起きた前後の画像だけを分析し,人物の位置や,速度,見た目の情報を用いて同一人物を対応付けることにより,隠れが起きても追いかけ続けられる高速な追跡手法を開発しました。

 

本誌に記載されている社名,商品名,サービス名などは,それぞれ各社が商標として使用している場合があります。