概要一覧
 
表紙イメージ 2013 VOL.68 No.8
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スマートグリッドを支える基盤技術

巻頭言 電力エネルギーインフラを支えるスマートグリッド 本文PDF(127KB/PDFデータ)
戸田 克敏

トレンド スマートグリッドの基盤技術 本文PDF(631KB/PDFデータ)
鈴木 邦明・三田村 謙一・竹田 大輔

東日本大震災以降,わが国もエネルギー政策で再生可能エネルギーの導入が促進され,これまで以上に効率的でかつ安定したエネルギーの運用方法が求められている。これを実現するため,スマートグリッド技術が期待を集めている。

東芝は,エネルギー管理などのシステム技術,需要家までのサービスを含めた情報通信技術(ICT),及び分散電源などのデバイス技術を,スマートグリッドの基盤技術として位置づけ,これらの技術開発を推進するとともに,付加価値の高い製品開発とソリューション提案を行っている。

スマートグリッドにおける監視制御技術 本文PDF(410KB/PDFデータ)
勝山 実・柿田 千春

近年,電力系統に対して再生可能エネルギーなどを利用した分散型電源の導入が拡大しており,電力系統を取り巻く環境が大きく変わってきている。更に,新たな設備として,電気自動車(EV)用充電機器や蓄電池システムの導入なども進んできている。
東芝は,長年培ってきた電力系統の監視制御技術を発展させ,スマートグリッド向け監視制御技術を新たに開発した。この技術は,電圧管理,周波数制御,出力変動の抑制,EVの充電管理,デマンドレスポンス,及び蓄電池複合技術などの要素技術から成り,当社は,これらを単独あるいは複数組み合わせることで,スマートグリッドにおける様々な課題に対応できるソリューションとして,スマートグリッド監視制御システム μEMS(Micro Energy Management System)を提供している。


スマートグリッドにおけるAMIシステム 本文PDF(352KB/PDFデータ)
小林 崇裕・前出 幸彦・伊藤 聡

電力網とICT(情報通信技術)網を連携させることで電力網の高信頼化や電力利用の高効率化を実現する,スマートグリッドの導入が世界各国で行われている。スマートグリッドの重要な構成要素の一つがAMI(Advanced Metering Infrastructure)システムであり,わが国でも今後,導入されようとしている。
東芝は,世界的なスマートメータのメーカーであるランディス・ギア社を東芝グループの一員に迎え,当社の電力システム技術とランディス・ギア社のスマートメータ技術を組み合わせることで,スマートメータからスマートメータ データ管理システム(MDMS)までをスルーしたAMIシステムを提供できるようになった。このシステムは,国際標準に準拠した通信方式を用いており,様々な通信環境下での利用,スケーラビリティ,及びセキュリティなどAMIシステムに要求される各種要件を満たすものである。


電力の安定供給を実現する定置型蓄電池システム 本文PDF(443KB/PDFデータ)
豊崎 智広・水谷 麻美・丹野 勉

風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーが大量に導入された場合の電力安定化対策として,需給調整に適用する定置型蓄電池システムが期待されている。
東芝製二次電池SCiBTMで構成した定置型蓄電池システムは,少ない電池容量で大きな入出力を得ることができ,充放電10,000回以上と耐久性に優れた特性を持ち,中小規模から大規模システムまで網羅している。当社は,この定置型蓄電池システムを適用して,電力の安定供給を実現するための様々な蓄電池ソリューションを開発し提供している。


スマートグリッドの最新の標準化動向と東芝の取組み 本文PDF(346KB/PDFデータ)
斉藤 健・正畑 康郎・大場 義洋

全世界でスマートグリッドへの注目が高まっている。スマートグリッドは,再生可能エネルギーの普及及び送配電や需要家の効率化を目指すシステムで,分散電源など電力分野の先端技術に加え,情報通信技術(ICT)を高度に適用することで実現される。デマンドレスポンスなどの新規サービスを実現するためには,これら先端技術の相互運用性を確保することが必須である。すなわち,スマートグリッドの構築には標準化が極めて重要になる。
このような背景の下,東芝は,電力系統と需要家の接続インタフェースやサイバーセキュリティなどスマートグリッドに関する国際標準化に積極的に貢献している。


スマートグリッドの基盤技術開発を支える統合型評価システム 本文PDF(432KB/PDFデータ)
宮崎 保幸・坂田 康治・大崎 善朗

スマートグリッドの技術開発は,電力技術と情報通信技術(ICT)を密接に連携させながら進める必要があり,これらの技術を組み込んだ開発システムを研究開発設備で事前検証することで,実際のシステムを迅速に立ち上げることが可能になる。
東芝は,電力系統側のスマートグリッド監視制御システム μEMS(Micro Energy Management System)と需要家側のHEMS(Home Energy Management System)及びBEMS(Building Energy Management System)を連携させることができる統合型スマートグリッド評価システムを構築し,スマートグリッド技術の研究開発や製品試験に活用している。今回,蓄電池システムやAMI(Advanced Metering Infrastructure)システムなどの設備を加えて更に増強したことで,スマートグリッドのより最先端の技術を開発できるようになった。




一般論文
微細電界効果トランジスタにおけるランダムテレグラフノイズを引き起こす欠陥機構の解明 本文PDF(349KB/PDFデータ)
陳 杰智・平野 泉・三谷 祐一郎

近年,トランジスタの微細化に伴って,ランダムテレグラフノイズ(RTN)と呼ばれるトランジスタの動作電流が揺らぐ現象が顕著になってきている。RTNはCMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサやNAND型フラッシュメモリの性能,特に信頼性に影響を及ぼすことが懸念されている。
東芝は,このRTNの起源を解明することで高信頼化技術の指針を得る取組みを進めている。今回,微細トランジスタを用いて,RTNを引き起こす原因となる絶縁膜中の欠陥として,ニュートラル欠陥とアトラクティブ欠陥と呼ばれる2種類の欠陥の寄与と,それぞれが及ぼす影響を実験により明らかにした。アトラクティブ欠陥に比べて,ニュートラル欠陥のエネルギー分布は約100 meV高く,かつしきい値電圧のシフトに与える影響が大きいことがわかった。今後,これらの結果を,トランジスタの高信頼化やRTNの影響を抑えるプロセス指針の策定に役だてていく。


 
自己組織化材料を用いたシングルナノサイズ領域のパターン加工技術 本文PDF(539KB/PDFデータ)
笹尾 典克・山本 亮介・菅原 克也

高分子化合物であるジブロックコポリマーの自己組織化現象は,加熱処理だけでナノメートル級の規則的パターンが自発的に得られるため,次世代のリソグラフィ技術として注目されている。一方で,パターン発現は自然現象に由来するため,この技術を加工プロセスに展開するにはパターンの均一性や位置を制御する必要がある。
東芝は,次世代以降のリソグラフィに対応する,10 nmを下回るドット径の自己組織化材料を均一に配列させる溶媒アニール法を開発した。また配列パターンを位置制御するため,基板上にプレパターンを作製し,プレパターン内で自己組織化させる誘導自己組織化技術を開発した。これらの技術を用いて,配列したパターンを下地基板に転写加工できることを実証した。


 
ソースコードからの仕様発掘技術 本文PDF(339KB/PDFデータ)
今井 健男・酒井 政裕・岩政 幹人

ソフトウェアの派生開発を効率的に行うには,仕様とプログラムの対応が維持されていることが重要である。
東芝は,プログラムのソースコードから仕様情報を発掘し,それを仕様へ反映するための技術開発を行っている。仕様に相当する情報をプログラムから機械的に発掘し抽出できれば,今後の製品展開で有用な情報を効率的に洗い出し,設計書を常に最新の状態に保つことができる。今回,その取組みの一環として,プログラムが正しく動作するための前提と仮定している条件(事前条件)を仕様としてプログラムから自動推定するための新たな技術を開発した。この技術を用いてC言語向けに試作したツールを例題プログラムに適用し,この技術が実用的で,人が考えるのと同等以上に汎用的な仕様を得ることができ,この技術の実用性を確認できた。


高次精度LESを用いて把握したガスタービン入口における高温流れの挙動 本文PDF(404KB/PDFデータ)
デバシス ビスワス

ガスタービンは,蒸気タービンとともにコンバインドサイクルの一翼を担う発電機器で,高効率化のため高温での運転が要求されている。特にタービンの第1段は高温度という厳しい環境にさらされ,長期にわたって安定な運転を続けるためには,高性能な冷却構造の設計が欠かせないものとなっている。
東芝は,燃焼器からタービンの入口に至るまでの,非常に不安定で乱れた状態の流れや温度分布の変化のようすを解明するため,高次精度LES(Large Eddy Simulation)乱流モデルを中心とした数値解析技術の開発を進めてきており,複雑な現象をより正確に把握できるようになった。この技術を利用すれば,今後のガスタービンの高効率化を更に推進することができる。


 
フレネルハーフミラーを用いた車載ヘッドアップディスプレイ用コンバイナ 本文PDF(365KB/PDFデータ)
堀内 一男・嶋川 茂・岡田 直忠

近年,自動車のフロントウインドーに映像を表示するヘッドアップディスプレイ(HUD)の導入が進んでいる。ドライバーの視線移動が少なくなることで交通事故の減少効果が期待されているが,HUDの投影ユニットの容積が大きいことなどから,多様な車種に搭載することが難しかった。
東芝は,フレネルハーフミラーをフロントガラスに接着することにより,ドライバー前方の風景がひずむことなく,映像を拡大投影できるフレネル型コンバイナを開発した。画質を劣化させるゴースト像の発生を抑える方法を確立し,実用的な画質を実現した。これにより,投影ユニットの容積を従来の1/2以下に小型化することが可能になる。


 
組合せオークション理論を用いたグローバル需給計画の適正化 本文PDF(470KB/PDFデータ)
村尾 了・古賀 康隆・櫻井 勇樹

製造販売(以下,製販と略記)のグローバル化に伴いサプライチェーンの大規模化と複雑化が加速するなか,真に全体最適な需給計画を立案することは困難になりつつある。かりにできたとしても,それが社内外の組織を含む膨大なステークホルダー間でWin-Winの関係とならない場合,その実行は難しい。今後のサプライチェーン管理には,全体最適性に加えて各組織の実行性も考慮した調整が重要であると考えられる。
そこで東芝は,社会学からのアナロジーによるマルチエージェント技術に基づいた組合せオークション理論に着目し,国立大学法人 神戸大学(以下,神戸大学と略記)との共同研究を行い,サプライチェーン上の需給調整業務を対象に,事業損益と組織間の対立関係を可視化し,意思決定の参考情報を提示する手法を開発した。


 
受変電設備の劣化診断技術 本文PDF(333KB/PDFデータ)
村山 聖子・田村 珠美・水出 隆

受変電設備の状態は,経過年数だけでなく,設備の設置環境や,使用状態,点検の実施状況などにより異なる。受変電設備を構成する機器の劣化状態を的確に把握できれば,設備の維持管理に対する取組みの改善や事故の未然防止が図れるため,最近では,定量的に劣化を診断できる技術への期待が高まっている。
東芝は,受変電設備の劣化診断技術として,絶縁材料の物性から絶縁抵抗を推定することで受変電設備の余寿命を診断する技術と,グリースの粘性抵抗を劣化指標とした開閉機器におけるグリースの劣化診断技術を開発した。これらの診断技術は,受変電設備の予防保全と事故の未然防止に有効である。




R&D最前線
フォトニック結晶構造を用いたCMOSイメージセンサ用カラーフィルタ設計技術 本文PDF(248KB/PDFデータ)
今野 有作

フォトニック結晶構造を利用したカラーフィルタで,肉眼に近い色合いを再現
携帯端末やデジタルカメラなどに用いられるCMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサの高画質化が求められています。特に,カメラを通して見た被写体の色合いを,より肉眼に近づけることが重要になっています。従来のCMOSイメージセンサでは,特定の波長の光を吸収する吸収型のカラーフィルタが用いられていました。しかし吸収材料の組合せには限りがあり,人が直接目で見た色合いの再現は困難です。

そこで東芝は,微細な形状を採用することによって透過する波長を選択できるフォトニック結晶構造カラーフィルタの設計技術を開発し,肉眼に近い色合いのCMOSイメージセンサの実現を目指しています。