概要一覧
 
表紙イメージ 2012 VOL.67 No.1
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再生可能エネルギーの利用拡大を担う太陽光発電システム
巻頭言 低炭素社会の実現に貢献する太陽光発電システム 本文PDF(143KB/PDFデータ)
北林 雅之

トレンド 太陽光発電システムの技術動向と東芝の取組み 本文PDF(422KB/PDFデータ)
稲葉 道彦・渡辺 憲治

近年,再生可能エネルギーへの期待が高まっており,特に太陽光発電システムの導入が国内外で急速に拡大している。その普及拡大には,国の適切な支援策が必要であるが,システムの高効率化やコスト低減も重要である。
東芝は,2009年1月1日に太陽光発電システム事業を推進する専門組織を立ち上げ,国内だけでなく,海外においても事業の展開を進めている。システムを構成する主要機器の開発とともに,蓄電池による変動抑制技術と,HEMS(Home Energy Management System)やスマートグリッドにおける太陽光発電システムの役割が重要になってきている。


電力会社向け メガソーラーシステム 本文PDF(471KB/PDFデータ)
長谷川 義朗・新井本 武士・大和田 晃司

東芝は,大容量の太陽光発電システム(以下,メガソーラーシステムと呼ぶ)を普及させるために,風況解析による太陽電池アレイの基礎工事コストの低減,構造のデザインレビューによる太陽電池アレイの架台コストの低減,パワーコンディショナ(PCS)を臨海部へ設置するための密閉型パッケージの開発,及び系統安定化機能の開発などを行い,電力会社向けのメガソーラーシステムに適用してきた。
今後,システムを構成する機器仕様の標準化と新たな工事工法の開発によりシステム構築コストを低減することで,メガソーラーシステムの更なる普及に努めていく。


海外向け 大容量太陽光発電用パワーコンディショナ 本文PDF(504KB/PDFデータ)
安保 達明・井川 英一・ルベン インスンサ

再生可能エネルギーの利用拡大が世界的に期待されており,特に太陽光発電では,10 MW超の大容量発電プラントが世界各地で計画されている。
東芝グループは,海外の太陽光発電プラント向けパワーコンディショナ(PCS)として,欧州を中心とした国際規格のIEC(国際電気標準会議)規格や中国の金太陽認証規格に適合した500 kW機及び630 kW機と,米国のUL(米国保険業者安全試験所)規格に適合した500 kW機を開発し製品化した。また,大容量の太陽光発電システムでは,PV(Photovoltaic)ステーションとして,PCS,高圧連系用 絶縁変圧器,及びスイッチギヤを一体化した屋外設置用パッケージを分散配置することが多く,今回,1 MWのPVステーションを試作し評価した。更に,PCSを北米市場に提供していくためには系統連系規格に適合することが不可欠であり,実規模での試験を実施したほか,信頼性試験を行い,実用上問題ないことを確認した。


出力変動抑制機能付き太陽光発電システムの実証試験 本文PDF(340KB/PDFデータ)
直井 伸也・野呂 康宏・奥田 靖男

太陽光発電(PV)は導入量が増えると予想されているが,太陽光など再生可能エネルギーによる発電は天候の影響を受けて出力が大きく変動する。そのため導入が進むと,電力系統の電圧変動や周波数変動が発生する可能性がある。
東芝は,この課題を解決するため,PVの出力変動抑制機能の確立を目的に,大容量のPVシステムと蓄電池システムを組み合わせて出力変動を抑制するシステムを構築し,実証試験を行っている。これまでの試験結果では,出力変動抑制機能が正常に動作し,PVの出力変動が顕著な日でも問題なく変動抑制効果があることを確認している。


太陽電池モジュールの異常監視・診断システム 本文PDF(381KB/PDFデータ)
佐藤 誠・野田 悦夫・若松 建吾・朴 英

近年,太陽光発電(PV)では,発電効率を向上させるため,新しい太陽電池モジュール(以下,モジュールと呼ぶ)の開発だけでなく,PVシステムを効果的に運用するための技術も注目されるようになった。
東芝は,モジュールの性能や劣化度を高精度に収集することが可能なアクティブセンシング モニタシステム,収集された電流・電圧データから異常部位を検出するデータマイニングシステム,及び異常部位や異常原因を特定するための画像診断システムを開発した。これらのシステムによって,PVシステムの効率的な保守及び運用を包括的に支援することが可能である。


メガソーラーシステムのグローバル展開を可能にするシステム統合基盤 本文PDF(463KB/PDFデータ)
石井 岳・岩政 幹人・長谷川 義朗

公共・産業向けの大容量太陽光発電(PV)システム,いわゆるメガソーラーシステムの需要が世界的に高まっている。メガソーラーシステム事業では,地域や気象の特性,事業者の投資目的など,多様な要件を満たす設備と運用計画を実現するシステムインテグレーション(以下,PV SIと略記)が鍵を握る。
東芝は,PV SIにおけるエンジニアリングを的確かつ効率的に行うためのPV SIフレームワークとその実行環境となるシステム統合基盤を開発している。PVシステム特有の多種多様な要件を的確にモデル化し最適解を導出できることをはじめ,SOA(Service Oriented Architecture)ベースのアプリケーション実行環境や一般的な表形式のインタフェースによってシステム構成や業務の変更に柔軟に対応できるという特長がある。


住宅向け太陽光発電用パワーコンディショナに適した高効率インバータ回路方式 本文PDF(381KB/PDFデータ)
餅川 宏・津田 純一・児山 裕史

住宅向け 太陽光発電用パワーコンディショナ(PCS)は,太陽電池の直流起電圧を交流に変換する装置で,小型,低騒音,及び低発熱が要求される。これらを満足するためには,可聴周波数以上の高周波スイッチングでも高い電力変換効率となるインバータ回路が必要である。
このため,東芝は,キャリア周波数25 kHzで99 %の変換効率を達成する独自のインバータ回路技術を開発した。また同時に,高周波スイッチングによって生じる漏れ電流や電磁ノイズを効果的に低減する,EMI(Electromagnetic Interference)抑制技術を開発した。これらにより,高効率で小型のトランスレス方式の住宅向け 太陽光発電用PCSを実現できる。


低コストと高性能を実現する有機薄膜太陽電池技術 本文PDF(393KB/PDFデータ)
斉藤 三長・大岡 青日・細矢 雅弘

近年,再生可能エネルギーの有力候補として太陽光発電(PV)技術が注目されている。使用される太陽電池モジュール市場ではシリコン系太陽電池が主流で,更なる高効率化を目指して化合物系や量子ドット型の太陽電池も開発されているが,真空機器などの製造装置導入コストや製造コストが高いという問題がある。
東芝は,低コストで高性能の有機薄膜太陽電池を実現するため,高起電力で大電流が得られる高効率の有機半導体材料の開発と光マネジメントの検討を進めるとともに,設備導入コスト及び製造コストが低く大面積に印刷可能なメニスカス印刷装置を開発した。フレキシブル基板に素子を作製できるので,軽量で,薄く,曲げられるなどの特性を生かして,携帯機器の充電用途や,住宅向け太陽電池モジュールなどの建材としても低コストで提供できる。




一般論文
軽くて薄いシートディスプレイを実現する酸化物半導体TFT 本文PDF(389KB/PDFデータ)
三浦 健太郎・上田 知正・山口 一

紙のように軽くて薄いシートディスプレイは,タブレット端末などモバイル機器のいっそうの軽量・薄型化や,ポスターのように壁に貼れてインテリアに溶け込むテレビの実現など,ディスプレイの利用シーンを大きく変える可能性がある。シートディスプレイの実用化には,プラスチック基板上の薄膜トランジスタ(TFT)の駆動能力と駆動安定性の確保が必須となる。
東芝は,液晶テレビで用いられるアモルファスシリコンTFTの10倍以上の高い駆動能力と駆動安定性を持ち,プラスチック基板上に200 ℃の低温プロセスで形成できる酸化物半導体TFTを開発した。このTFTを用い,ゲートドライバ回路を同時形成した,IC部を除くパネル部の質量1 g,厚さ0.1 mmの3型有機EL(Electroluminescence)シートディスプレイを試作し,正常に動作することを検証した。


省エネ化を促進できるモータ駆動用ベクトル制御マイコンTMPM370 本文PDF(332KB/PDFデータ)
鈴木 信行・長谷川 幸久・小柴 晋

地球環境保護の観点から,近年の家電製品には省エネ化が要求されている。エアコンや,冷蔵庫,洗濯機などではモータを高効率,低振動,及び低騒音で運転するため正弦波駆動技術が用いられ,ベクトル制御が採用されている。ベクトル制御は既に国内家電メーカーに広く普及しているが,今後新興国へも拡大して行くと予想されている。
東芝は,ベクトル制御を新たに導入したいユーザーにとって使いやすく,ソフトウェア開発負荷を軽減できるベクトルエンジンを搭載したマイコンTMPM370を開発した。省エネのために正弦波駆動を必要とする機器への適用に対して非常に効果的である。


非圧縮の高精細映像を伝送できる携帯機器向け映像伝送技術 MHLTM 本文PDF(332KB/PDFデータ)
松村 正文・石綿 香代子・大浦 和真

近年,高精細な映像を扱える高性能で高機能な携帯機器の普及が進んできており,その要求に応える映像伝送技術の一つとして,MHL(Mobile High-Definition Link)が注目を集めつつある。MHLは,従来デジタル家電製品で使用されてきた映像伝送技術に加え,携帯機器での利用を意識した特長と機能を持っており,携帯機器の利便性を損なうことなくデジタル映像伝送を実現できる。MHLにより,携帯機器からデジタルテレビ(TV)へフルHD(1,920×1,080画素)の映像を非圧縮でデジタル伝送でき,また,映像を伝送しながらデジタルTVから携帯機器のバッテリーを充電できる。
東芝はこれらの技術の応用製品を開発しており,またMHLのコンソーシアムプロモーターの1社としてその規格策定にも貢献している。


グラスレス3D対応のAVノートPC dynabookTM QosmioTM T851 本文PDF(401KB/PDFデータ)
界 陽夫・中村 誠一・長澤 則和

これまで東芝は,デジタルAV機器と高性能ノートPC(パソコン)の機能を併せ持ったAVノートPCとして,Qosmioシリーズの開発を進めてきた。今回,専用眼鏡なし(グラスレス)で3D(立体視)映像を視聴できるdynabook Qosmio T851を開発した。第7世代目となるT851は,グラスレス3D技術に加えて,“3Dウィンドウ”,“フェイストラッキング”,“リアルタイム2D3D変換”などの新技術を搭載したことで,より自然に,より快適に3Dコンテンツを楽しむことが可能になった。また,従来の加飾技術を発展させたテクスチャ付きフィルムを用いたIMF(In Mold Forming)加飾を採用することで,立体感や触感に加えて,耐指紋性も向上している。

組込み機器で3D GUIを効率的に開発できるグラフィックスライブラリ RIANT 本文PDF(344KB/PDFデータ)
深井 祐介・アルマン ジリエ・中西 晃

携帯電話やデジタルテレビ(TV)など組込み機器へのGPU(Graphics Processing Unit)搭載が進み,美しいグラフィックス表示やアニメーション効果を持つGUI(Graphical User Interface)を備えた製品が実現されている。しかしGPUの操作は非常に複雑であり,効率的にGUIを開発することは難しかった。
東芝は,GPUを搭載した組込み機器向けに,簡単な操作で2D・3D(2次元・3次元)アニメーション効果を付加できるグラフィックスライブラリ“RIANT(ライアント)”を開発した。既存の2D GUI部品をGPU機能で描画することにより,2D GUIツールキットの機能性と移植性を確保しながら3D描画機能と描画速度を向上させ,効率的な3D GUI開発を可能にした。


真空バルブ式 負荷時タップ切換器 本文PDF(397KB/PDFデータ)
杉山 裕紀・鹿子木 修・江口 直紀

負荷時タップ切換器(LTC:on-Load Tap Changer)は,運転状態の変圧器において電圧調整のためにタップを切り換える装置である。従来から使用されている油中アーク切換式LTCは,タップ切換え時に油中に発生するアークにより切換接点が消耗するため,定期的な保守点検を必要とする。また,アークによるスラッジで汚染された絶縁油をろ過するために,活線浄油機が必要になる。真空バルブ式LTC(VI-LTC)は,油中にアークが発生しないため絶縁油を汚染せず,切換接点の消耗も非常に少ないことから,保守インターバルの延伸化や機器の長寿命化が可能であり,近年注目が高まっている。
東芝は,30 MVA級変圧器に適用可能な真空バルブ式LTCを既に製品化しているが,このたび,154 kV-100 MVA級までの変圧器に適用可能な中容量器を開発した。真空バルブには多数の実績がある当社技術を適用し,また回路切換方式には優れた性能と高い信頼性を実現する当社固有の方式を採用した。




R&D最前線
半導体用フォトマスクの精度を向上させるスキャン型現像技術 本文PDF(258KB/PDFデータ)
桜井 秀昭

先端半導体デバイスの製造を支えるフォトマスクパターンの高精度化
映像の高画質化や3D(立体視)化など,半導体応用製品における技術の進化に伴い,デバイスパターンの更なる高精度化が求められています。これを実現するうえで,フォトマスクのパターン加工精度は非常に重要です。パターン加工は主に電子線を用いた露光工程と現像工程から成り,現像工程では,回路パターンの疎密に依存する寸法変動と,フォトマスク基板内でのパターン寸法の均一性を改善することが課題です。
東芝は,これらの課題を同時に解決するスキャン型現像技術 PGSD(Proximity Gap Suction Development)方式を開発し,フォトマスクの量産展開を実現しました。