原子力産業のグローバル化に向けて—日本の役割 (144KB/PDFデータ) |
服部 拓也 |
原子力特集の発刊に際して (125KB/PDFデータ) |
五十嵐 安治 |
東芝グループの原子力事業展開 (116KB/PDFデータ) |
岡村 潔 |
最新の原子力プラント技術 (572KB/PDFデータ) |
飯倉 隆彦・橘川 敬介
安定したエネルギーを供給できる原子力プラントは,多くの技術から成り立っている。原子力リーディングカンパニーの東芝グループは,沸騰水型原子炉(BWR)と加圧水型原子炉(PWR)のプラント建設,保全サービスに加え,原子燃料サイクル,高速炉,核融合,加速器といった原子力にかかわる幅広い製品及びサービスを提供している。 これらの製品及びサービスを創出するため,東芝グループは長年培ってきた独自技術を根幹とし,原子力プラントを支える設計・解析技術,システム・機器技術,計装・制御技術及び材料・化学技術の開発を進めている。各技術分野の最先端技術を紹介する。
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■日本企業初の海外原子力発電プラント建設 (432KB/PDFデータ) |
丸山 亨・成瀬 佳宏・薮田 均
エネルギーの安定供給及び温暖化防止を背景に,原子力発電プラントの建設計画が世界規模で拡大している。過去30年間,新規の原子力発電プラント建設の実績がなかった米国でも,現在既に30基以上の建設が計画されている。一転成長市場となった米国で,2009年2月,東芝はわが国の企業として初めて原子力発電プラント建設プロジェクトの一括契約を締結した。 原子力事業初の米国法人 東芝アメリカ原子力エナジー社(TANE)は,ノースカロライナ州シャーロットを主要拠点として,長年の国内プラント建設で培った技術とノウハウを商習慣や,制度,規制の異なる米国に適合させるための様々な取組みを行いながら,世界が注目するこのプロジェクトを確実に遂行している。
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■ABWRの国内外への展開 (1.25MB/PDFデータ) |
畠澤 守・渕野 聡志・中田 耕太郎
東芝は長年にわたり改良型沸騰水型原子炉(ABWR)の開発に携わり,1996年に世界初のABWRを東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所6号機に納入した。その後も当社の主力製品としてABWRの建設・運転支援を継続しており,現在,電源開発(株)大間原子力発電所の建設並びに東京電力(株)東通原子力発電所1号機の設計を進めている。更に今後計画されている発電所向けに東芝型ABWRの標準化を推進している。 また,海外でのABWRプロジェクトとして,米国サウステキサスプロジェクト3,4号機(STP-3/4)のEPC(設計,調達,建設)契約を締結しプロジェクトを遂行するとともに,フィンランドプロジェクトの受注に向け提案活動を進めている。これら当社のABWR世界展開を支えるため,シビアアクシデント(過酷事故)の対策設備や安全設計のための解析技術高度化なども推進している。当社はこれらの活動を通じて地球温暖化防止とエネルギーセキュリティ確保を両立できる原子力発電の世界的なニーズに貢献している。 [図解]ABWR (304KB/PDFデータ) |
■AP1000TMのグローバル展開 (511KB/PDFデータ) |
野田 哲也・畠澤 守・大久保 修
ウェスチングハウス社(Westinghouse Electric Company:以下,WECと略記)は,革新的な加圧水型原子炉(PWR)“AP1000TM”を実用化し,グローバル展開を進めている。AP1000TMでは,静的安全システムの完全採用などにより,従来型PWRに比べて物量が大きく低減され,またモジュール工法や鋼板コンクリート(SC)工法などの最新の建設技術も採用されており,建設費の低減と建設期間の短縮が実現されている。AP1000TMは,既に中国で4基,米国で6基が契約済であり,中国の三門・海陽サイトでは計4基の建設工事が順調に進められており,米国の2サイトでも先行工事が始まっている。更にWECは,世界各国の新規原子力建設計画へ向け,AP1000TMの提案活動を加速している。 [図解]AP1000TM (239KB/PDFデータ) |
■次世代軽水炉開発への取組み (354KB/PDFデータ) |
石橋 文彦・安岡 誠
2030年ころの国内外における既存炉のリプレースを目的として,国家プロジェクト「次世代軽水炉等技術開発」が2008年度から官民一体で開始された。開発する炉は世界標準となるように,ウラン濃縮度を5~10 wt%まで高めた燃料とそれに対応できる炉心,免震構造,長寿命材料,水化学技術(注1)の高度化,革新的な建設工法,静的・動的安全の最適化などの技術を開発することで,安全性,信頼性,経済性などの向上を目指している。2010年7月の中間的総合評価の結果,開発目標が達成される見通しがあると認められ,引き続き開発を継続し,主な開発項目と基本設計を2015年度までに終了する計画である。 東芝は,当初からの開発メンバーとして,次世代軽水炉の概念設計検討及び要素技術開発に積極的に取り組んでいる。 (注1) 軽水炉の水質を化学的に制御する技術。 |
■運転プラントの設備利用率向上 (558KB/PDFデータ) |
田中 一彦・高山 拓治・清水 俊一 運転中の原子力発電所のパフォーマンスでもっとも重要なのは,設備利用率である。二酸化炭素の排出抑制という環境面からも,経済性に優れたベースロードを担う原子力発電所の設備利用率を向上させることは,電気事業者を含めた世界共通のニーズである。日本国内のプラント設備利用率の累積平均は70 %程度であるが,これに比べ海外では90 %以上になっている。国内ではここ数年,豊富な実績と新技術の導入によって不適合などによる計画外停止は減少傾向にあるが,海外に比べて運転サイクルが短いうえ,定期検査の日数が長いことがこの差になってきている。 そこで東芝は,設備利用率95 %以上を目指したSmart Nuclear Plant構想を立ち上げ,新技術の開発と導入を展開している。 |
■原子力発電プラントの性能向上と寿命延長 (465KB/PDFデータ) |
大久保 修・浅野 直樹・藪 智彦 国内では運転開始後30年を超える原子力発電プラントが増加しており,また地球温暖化対策の観点からも,既存の原子力発電プラントの信頼性や経済性の向上と寿命延長が重要な課題となっている。 この課題に対処するため東芝は,長期間の運転に伴う経年劣化の解消と経済性向上を実現するタービン設備の性能向上技術及び,狭あい部が多く補修が困難な原子炉内部に対してはレーザを応用した保全技術,電源系統の再構築と老朽設備更新により電源強化を実現する電源系統のリフレッシュ技術を開発し,実機への適用を進めている。 |
■原子力監視計装制御システムの最新技術 (328KB/PDFデータ) |
前川 立行・戸塚 紳一・中久木 功 原子力発電プラントの中央制御盤は,運転員の体型や視野角,認知特性などを考慮したヒューマンファクターエンジニアリング(HFE)に基づいて設計する必要があり,特に米国向けの中央制御盤では,原子力規制委員会が発行するガイドに従い,HFEを取り入れた設計を行う必要がある。そこで東芝は,実際の中央制御盤と同等な環境で,画面表示色やシンボル,運転操作に対する応答時間などを変更することでヒューマンファクターを評価できるHFE評価設備を開発し,日本及び米国に設置した。 また,監視計装制御システムでは,高信頼性の確保に加えて,保守部品の長期供給体制や保守費用の低減など,運転経済性向上のための設備維持コストの低減が求められている。当社は,これらのユーザーニーズに応えるために,FPGA(Field Programmable Gate Array)を適用した原子炉監視計装制御システムを開発し,製品のラインアップを完了した。 |
■原子燃料の安定供給への取組み (467KB/PDFデータ) |
小池 邦久・今村 功・野田 哲也 地球温暖化防止及びエネルギー安定供給の観点から世界各国で原子力発電プラントの建設が計画されており,東芝はウェスチングハウス社(Westinghouse Electric Company:WEC)とともに沸騰水型原子炉(BWR)及び加圧水型原子炉(PWR)両型を持つメーカーとして各地域,顧客のニーズに対応した活動を展開している。原子力発電プラントの建設に伴い今後需要が拡大する原子燃料を安定的に供給するために,当社及びWECは,ウラン(U)生産,転換,濃縮,及び燃料成型加工のサプライチェーンの強化と拡充に取り組んでいる。 |
■原子燃料サイクルへの取組み (396KB/PDFデータ) |
芝野 隆之・成瀬 克彦・市川 長佳 東芝は,わが国での原子燃料サイクルの確立に向け,原子力発電プラントメーカーとして使用済燃料を再利用するために必要な中間貯蔵施設の設計及び製作と再処理施設の設計及び建設に携わってきた。また,環境負荷低減のために,国内初の商業用再処理施設向けの廃棄物処理施設や貯蔵施設など,増設施設の開発及び設計を行ってきている。更に,将来の軽水炉から高速炉への移行期に向けて次世代再処理システムの開発を進めており,現在から将来にわたってエネルギーを安定供給できる原子燃料サイクルの実現に取り組んでいる。 |
■原子力発電プラントの廃止措置 (399KB/PDFデータ) |
田中 一彦・芝野 隆之・成瀬 克彦 国内の原子力発電プラントでは,既に運転が終了して施設の解体や,放射能汚染の除去,放射性廃棄物の廃棄といった廃止措置が始まっている。 東芝は,これまでに原子力発電プラントの設計,建設,保守,及び保全で培ってきた技術を用いて,廃止措置で必要になる除染や,解体,廃棄物処理のほか,放射線測定などの広範囲な技術を開発し実用化してきた。これらの技術を適用することで,合理的な廃止措置の計画立案及び実施に貢献している。 |
■小型高速炉4Sと高速炉技術 (590KB/PDFデータ) |
大田 裕之・福家 賢 東芝は,遠隔地のコミュニティや資源開発のエネルギー供給に対応した,燃料交換が不要な小型高速炉“4S(Super-Safe,Small and Simple)”の開発を進めている。現在この概念を実現させるための革新技術である,電磁ポンプ,電磁流量計,及び二重管蒸気発生器の技術実証を当社のナトリウム(Na)ループ試験設備を活用して推進している。これらの技術は,開発中の長寿命制御棒とともに大型高速炉にも適用できる。 [図解]4S (265KB/PDFデータ) |
■核融合エネルギー開発への取組み (423KB/PDFデータ) |
仙田 郁夫・大田 裕之・佐藤 潔和 核融合発電の実現を目指して,核融合実験装置の開発が進められており,東芝は,これらのプロジェクト向けに機器を開発し納入している。既に国内で運用中のLHD(Large Helical Device)向けに大型超電導コイルなどの主要機器を納めた。 現在,日欧協力でJT-60SA(Super Advanced)の建設が,また,わが国を含む7か国の国際協力でITER(国際熱核融合実験炉)の建設が本格的に始まろうとしている。当社は,JT-60SA向けの真空容器の供給と装置全体の組立て,及びITER向けのトロイダル磁場コイルや炉内遠隔保守装置などの試作と実機の製作を通じて,これらのプロジェクトに参画している。 |
■次世代重粒子線照射システム (403KB/PDFデータ) |
小野 通隆・大田 裕之・佐藤 潔和 重粒子線がん治療法は,難治性がんの克服と患者の肉体的及び精神的な負担を軽減させることを目指したもので,独立行政法人 放射線医学総合研究所(以下,放医研と略記)で開発が進められており,国内にとどまらず世界各国に広まりつつある。現在,放医研は次世代の重粒子線照射システムを開発中で,その拠点となる新治療棟の建設は既に終了し,2010年度末には,次世代技術を用いた治療を開始する計画である。 東芝は,この計画に全面的に協力し,3次元スキャニングシステム,アーム型治療台を用いた患者ハンドリングシステム,及び治療情報システムを開発している。これらは,この次世代重粒子線照射システムの核というべき技術であり,今後の照射システムの主流になるものである。 |
■原子力発電プラントを支える基盤技術 (473KB/PDFデータ) |
中田 耕太郎・高橋 雅士・萩原 剛 東芝は,経済性及び安全性など世界最高レベルの原子力発電プラントの開発に向けて,三つの先進技術の開発を行っている。炉心燃料形状を自由に変えての特性評価を可能にする炉心解析技術,過酷な原子炉内環境でプラントの健全性を支える材料技術,そして運転プラントの健全性を確保し寿命の延長を実現させる保全に関する技術である。これら基盤技術を更に磨き,高い信頼性と経済性を兼ね備えた原子力発電プラントの建設と,安全な運転に貢献していく。 |