当社取締役会の戦略委員会による、 スピンオフ計画に至るプロセスについての株主の皆様へのアップデート(和訳)

2021年11月12日

株主の皆様、

本日、株式会社東芝(以下「東芝」あるいは「当社」)は、株主の皆様に向けてさらなる価値を創造すべく、3つの独立会社とするという、大胆かつ野心的な計画(以下「スピンオフ計画」または「本計画」)を発表しました。本計画は当社取締役会(以下「取締役会」)の戦略委員会(以下「SRC」)による5ヶ月近くの以下の活動の結果として策定されたものです:

• 客観的かつ徹底的なレビュープロセスを実施する
• 株主価値を顕在化すべく、あらゆる選択肢を検討する
• 株主の皆様及び戦略・金融投資家を含む潜在的な投資家からの直接的なインプットを考慮する
• 株主の皆様及びその他重要なステークホルダーのために価値を最大化させるべく、当社にとって最良のアプローチを策定する

このスピンオフ計画は、政府による近時の取り組みを活用した、これまでの日本の商慣習に縛られないものであり、東芝、当社株主の皆様、従業員及び顧客の皆様にとり、当社の進化における大きな転換点でもあります。これほどの規模及び重要性を持つ日本企業としては初めて、近時の法制度の下で可能となった税制適格スピンオフのストラクチャーを活用するものです。このアプローチは、株主の皆様に対する長期的な価値向上を実現するという東芝の決意を表すものであり、かつ日本経済をさらに開放し活性化させるという本制度の意図をさらに前進させるものでもあります。

本声明は、株主の皆様との今後の議論に先立ち、SRCがスピンオフ計画を取締役会に推奨し、取締役会が全員一致でその推奨内容を決議するに至った各種活動や協議内容の経緯について、秘密保持に配慮しつつも許す限りの透明性をもってご説明する目的で作成しております。

東芝は本計画の下で3つの独立会社として変革し、生まれ変わります。これら3社は、当社が現状のまま事業を継続するよりもはるかに確実かつ効果的に株主価値を顕在化すべく、より整理され、より特化した会社となります。

明確にお伝えしたいのは、このスピンオフ計画は株主の皆様に対して短期的な利益を確保しながら、独立した各企業がさらに持続的かつ利益ある成長を実現するための大幅な変革のプロセスの始まりに過ぎないということです。さらにSRC は、本声明の補足資料の末尾に記載している通り、スピンオフ計画の準備期間において、自己株式取得や資産売却を含めた企業価値向上に向けた7つの具体的なコミットメントを直ちに実行するよう、取締役会に推奨しています。また当社は、こうしたプロセスの進捗状況を定期的にご報告する予定です。

SRCとして、本提案を策定した執行部の尽力を評価いたします。

SRCの役割がこれで終わったわけでは決してありません。SRCは、来年1–3月に実施を予定している臨時株主総会で株主の皆様に諮られるまで、スピンオフ計画の準備を引き続き監督してまいります。またその時点で、取締役会にステアリングコミッティーを組成し、そこにSRCメンバーを含めることで、本計画を成功裏に完了させるための継続性と説明責任を確保する予定です。SRCメンバーは本件に関連する経験・知見を含む多様なバックグラウンドを有しておりますが、現執行部を支えていくにあたり、外部専門家や新たに採用される幹部役職員からのサポートも得る予定です。

株主の皆様よりご意見・ご感想をいただけること、そして予定している臨時株主総会においてご賛同いただけることを願っております。

以下、補足資料において、SRCの活動やタイムラインについて詳しく記載しています。株主の皆様にとって有用な内容であることを願っています。

ポール ブロフ(委員長)
ジェリー ブラック
橋本 勝則
ワイズマン廣田 綾子
レイモンド ゼイジ

 


補足資料:スピンオフ計画に至るSRCの活動のタイムライン及び経緯

SRCの発足:東芝の企業価値向上のための取締役会内の独立した委員会

SRCは2021年の定時株主総会直後の6月25日付で取締役会の委員会として正式に発足し、取締役8名の内5名(いずれも独立社外取締役)が参加し、独立した財務アドバイザー(UBS証券株式会社)及び法務アドバイザー(長島・大野・常松法律事務所)のサポートを得てその活動を開始しました。東芝が現在直面している状況には、ポール ブロフ氏が有する経験がよく当てはまるとの理由から、指名委員会から同氏に対しSRCの議長を務めるよう要請がなされ、他に財務や事業に関するバックグラウンドを有する4名の取締役も加わりました。

SRCはその発足以来、「企業価値を向上させるべく、過去と決別し、東芝が取り得る様々な戦略的オプションを検討する」というミッションを明確に持っていました。このアプローチは、客観的かつ未来志向であり、また特定の解決策ありきではないことを意味しました。

SRCについて、一部の株主の方やメディアは、当社を売却するための入札手続きを行うために組成されたものだと考えていましたが、それはSRCのミッションではありませんでした。取締役会は、売却手続きを行うことは慎重な準備と遂行を要し、それが、一方では新中期経営計画(以下「MTBP」)の策定作業を行っている執行部にとって大きな負担になり、また結論ありきになってしまうと判断しました。よって取締役会はSRCに対し、他の選択肢と比較して「売却のプロセスを追求すべきか否か」を検討するよう指示しました。我々は、各種コミュニケーション及び活動において、この点については常に明確にして参りました。

取締役会及びSRCは、具体的かつ実現可能性のある真摯な提案を歓迎し、それを受領した場合は取締役会あるいは取締役会内の特別委員会でしっかりと検討すると常に申し上げてきました。SRCの発足以降、当社全体についての提案や、かかる提案に繋がり得る問い合わせは受領しておらず、それを拒否もしておりません。

SRCのメンバーは、本プロセスに多大な時間を費やしてきました。6月25日から11月12日までの間、SRCは週次で計18回協議を重ねました。加えて、SRCメンバー間、そして株主の皆様や潜在的な投資家及び他の市場参加者など外部の方々も交え、50回以上の協議を都度行ってきました。また、透明性を高めるため、取締役会は7月30日及び9月8日にSRCの活動状況を皆様にご報告して参りました。

この間、我々は一貫して極力全てのステークホルダーに配慮し、本プロセスについて提案や意見をされた全ての株主の皆様や投資家に対し、門戸を開いて参りました。

経営陣の顔触れが違うものであったならば、東芝のあるべき姿について、異なる結論に達した可能性もあります。ここではっきりとお伝えしたいのは、とても幅広い事業の集合体を取り巻く非常に複雑な状況について、前提、解釈、重み付けや結論が異なると、必然的に異なった結論に至ってしまう、ということです。


株主の皆様とのエンゲージメント:本プロセスの出発点

SRCが最初に行ったのは、株主の皆様の声を聞くことでした。SRC及びその他の取締役は、既存の株主の皆様と将来株主になり得る皆様と、30回以上にわたる積極的なエンゲージメントを、潜在的な戦略・金融投資家との協議とは別に行いました。

株主の皆様の中には、SRCのプロセス対するご意見及び当社が進むべき方向について、当社に書面でお伝えくださった方々もいました。

加えて、企業のIRをサポートする独立したアドバイザーであるMakinson Cowellにより、26の株主の皆様に対し広範囲にわたる匿名での調査が7月に行われ、フィードバックを求めました。株主の皆様からのフィードバックは明確でした。調査に参加した株主の皆様の多くは、ポートフォリオの大幅な見直しや非上場化を含め、当社の大胆かつ新たな方向性が早急に必要であり、取締役会は新たなCEO及び取締役会メンバーの選任を待つことなく決断をするべき、との考えでした。

中期経営計画:信頼性と実行を執行部に求める

株主の皆様からのフィードバックを受け、そして当社が表明したコミットメントを踏まえ、SRCは執行部に対し、MTBPが前回の東芝 Nextプランの単なる延長線ではなく、株主の皆様のご懸念にしっかりと向き合うものでなければならない、と推奨しました。

株主の皆様からの指摘事項には、東芝の株価に織り込まれているコングロマリット・ディスカウントや、執行部の焦点が定まっていないと市場から見られていること、非効率なバランスシートや改善が必要な資本配分、不十分な投資が低成長及び中核事業における競争力の喪失につながっていること、そして脆弱なガバナンスなどが含まれました。

執行部は8月以降、MTBPの初期ドラフト(以下「MTBPドラフト」)のSRCへの共有を開始しました。MTBPドラフトの前提条件の実現可能性を分析・評価すべく、外部のマネジメント・コンサルティング・ファームであるEYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社が起用されました。SRCと執行部との間のやり取りは15回以上に及び、その中でSRCは執行部に対し、その計画が株主の皆様にとって説得力のあるものかどうかを検討するよう、さらなる取り組みを要請しました。

SRCが早期から認識し始めたのは、大規模な資産・事業売却、海外の競合他社と同水準までのバランスシート上のレバレッジ引き上げ、及び株主の皆様への還元強化などを含む事業ポートフォリオの大胆な再構築についての現実的なプランを執行部が策定することは可能であるものの、投資が長きにわたり不足しており、かつ対象地域が主に日本国内である中核事業を確実に成長させる道筋をつけることは難しい、という点です。東芝が幾年にもわたり計画を実現できてこなかったことや、大規模な買収を成功裏に実現できていないことを踏まえると、MTBPドラフトの実現可能性や、執行部がそれを実現させる能力について株主の皆様に信じていただくことは難しいであろうと思われました。また、MTBPドラフトには非中核事業の売却が盛り込まれていたものの、その後残る会社には依然として複雑さが残り、高コスト構造に悩まされるであろうと考えられました。

よってSRCは、MTBPドラフトに基づく東芝のインプライドな本源的価値について、計画上の数字がどの程度実現可能と判断するか、その結果のキャッシュフローにどの程度のディスカウントを適用するか、そして依然として残るコングロマリット・ディスカウントについてどう考えるかなどの要素により、そのレンジの幅が広くなってしまう、との認識に至りました。SRCは、市場参加者が高いディスカウント率を適用して計画の実現可能性を低めに見積もり、その結果上記レンジの下限付近のみが参照されてしまうであろう、と判断しました。この点については、SRCによる複数の株主の皆様との対話の中でも確認されました。

SRCが特に懸念したのは、非中核資産の売却及びバランスシート上のレバレッジ引き上げによって得られるキャッシュを株主の皆様に還元する、という短期的なメリットはあるものの、大規模な買収や生産能力引き上げへの投資などを含む中核事業の成長プランを実行するために必要となる株主の長期にわたる支持を得るのに東芝は引き続き苦慮し、その結果将来、現在よりも悪化した状態で身売りせざるを得なくなり、株主価値が棄損されてしまう、というシナリオでした。

戦略・金融投資家とのエンゲージメント:MTBP以外のオプションを検討する上で鍵となる要素

SRCは上記を踏まえ、執行部が策定したMTBPドラフト以外の戦略的オプションを探るべく、パートナー候補との対話を積極的に行いました。

戦略投資家については、SRCによる検討の初期段階から、東芝の広範かつコングロマリットな事業ポートフォリオを考慮すると、戦略投資家が東芝全体の買収に興味を示す可能性は低いであろうと判断しました。これは、現時点までに戦略投資家からの引き合いの件数が非常に限られていること、そしてそれら引き合いが特定の事業についてのものであったことからも裏付けられています。執行部はこれら投資家が、新たな計画が進むにつれて将来考えられる資産・事業の売却における買い手候補である限りにおいて、それら投資家とのエンゲージメントを継続して参ります。

金融投資家について、取締役会及びSRCは、東芝のような複雑かつ大規模な企業の案件を日本で実行し、かつ完遂できるだけの規模、経験及び知見を有するグローバルなプライベート・エクイティ・ファンドと優先して対話を行うこととしました。秘密保持の要請に鑑み、具体名はお示しできないものの、SRCは上記条件を満たす 6社のファンドと協議を行いました。これ以外には1社のプライベート・エクイティ・ファンドがSRCにアプローチして来ましたが、当該ファンドが東芝からの資産・事業の売却についてのみ興味を示したため、今後東芝を取り巻く状況が当該ファンドの興味によりかなうものになるまで待つよう伝えました。

検討の過程で2つの代替的な投資テーマが浮上しました。ある1社は協議の初期段階から、東芝の上場を維持しつつ、自身は少数株主として出資する意思を表明していました。その他のファンドは完全な非上場化により強く興味を示しており、その前提で出資を考えていましたが、その内の1社は協議が進展する過程でマイノリティ出資についても興味を示し始めました。

マイノリティ出資:パートナーシップの可能性についても入念に検討

マイノリティ出資については、当初からそれに興味を示していた1社が、東芝の中核事業であるエネルギー及びインフラ事業に関連する幅広い資産ポートフォリオ及び運営ノウハウを有していたことから、SRCは執行部にも協議に加わるよう促し、同社を実質的な長期的戦略パートナーとみなすよう推奨しました。8月から10月にかけて25回以上のミーティングが行われ、同社がどのように投資を行い、ガバナンスや執行に関与し、全ての株主の皆様のために東芝の中核事業の価値をどのように高めるのか、という点について協議を行いました。協議を有意義なものとするため、MTBPドラフトの共有もなされました。

SRCは、東芝が単独で事業を継続する、という執行部の案と比べ、この選択肢がより良いものであると考えました。その理由としては、パートナーシップを組むことにより、東芝が再び利益を伴う成長軌道に乗り、計画を達成し、中核事業における投資(海外での買収を含む)に対する株主の皆様の支持を得るために必要な事業運営上の変化をより実現しやすくなる、という点があります。まだ協議の初期段階ではあるものの、執行部と同社は、両社の事業ポートフォリオ間でいくつかのシナジーが見込めることや、東芝に適用可能なベストプラクティスが存在することを確認しました。正確な定量化はしづらいものの、方向性としては、東芝の本源的価値はMTBPドラフトに基づく価値よりも高いと判断しました。

しかしながら、幾度もの協議を経た結果、経済条件、ダウンサイド・プロテクション及び支配権に関する同社の要求は、自身の少数株主としての立場とも、その他の一般株主の皆様の権利とも整合が取れておらず、しかも上記メリットを実現できる確実性が示せない中で、同社は既存株主の皆様の支持を得づらい取引ストラクチャーしか示すことができませんでした。

10月には、SRCが協議を行っていた別のプライベート・エクイティ・ファンドが、完全な非上場化のみならず、上場を維持した場合の東芝へのマイノリティ出資にも関心があるとの意向を示しました。SRCは、このファンドについても、執行部に対し協議・検討を促すに足る事業ポートフォリオや事業運営経験を有していると判断しました。SRCはまた、当初の協議相手と協議を進めるにあたり、競争意識を持たせることも重要と考えました。

協議はまだ初期段階にあったものの、このファンドも、東芝の改革プランを実行する確度を高められるであろうことが分かりました。一方で、当初の協議相手同様、他の一般株主の皆様の利益と完全に整合した形での投資ストラクチャーについて合意に至ることは難しいであろうと見受けられました。 


非上場化:SRCによる評価の重要な要素となったプライベート・エクイティとの協議

非上場化については、SRCは取締役会から、プライベート・エクイティ・ファンドと協議を行うこと、他方で、東芝を取り巻く状況に対する関心の高まりを受け、協議を進めるにあたってはいたずらに市場の注目を集め、報道されることのないよう、慎重に進めるよう指示を受けました。

SRCは8月以降、実績があると判断したファンド5社と初期的な協議を行い、各社の実績について聴取し、東芝に対する関心の度合いを計りました。9月にはそれらのうち、ファンド4社と第2段階目の協議を行い、東芝に対する見方をさらに詳しく聴取し、東芝を支配するに至った場合にどのように価値を創造するのか、また想定される規制上のハードルをどのように乗り越えるのか、さらに顧客や従業員のモチベーションや雇用維持にどう対処するのかといった点についての考え方などについても聴取しました。これら協議は主に定性面についてのものでしたが、ファンドが東芝特有の複雑さについてどの程度理解しており、それを適切に価格の算定に織り込むかどうかをSRCが確認できたという意味において、価格協議に向けて必要不可欠なステップとなりました。

取締役会は、それまでの進捗について了承すると、それら4社のファンドについて、価格、ストラクチャー及びクロージングまでのスケジュール感に関する先方の考え方を正しく理解すべく、10月と11月に第3段階目の交渉を行うよう、SRCに指示しました。より充実した協議とするため、最新のMTBP上の数字についても事前に共有しました。

正式なデュー・ディリジェンスを経た、入念に準備された競争入札プロセスは行われていないものの、各ファンドによるデータ、分析及び思考の量を踏まえると、プライベート・エクイティ・ファンド各社とのこうした協議により、先方がどの程度の価格水準で非上場化が実現可能と考えているかについて、意義のある視点を得ることができたとSRCは考えました。

SRCは、当該価格のレンジは、それまでにメディアで報道されていた市場の期待水準に比べて説得力のあるものではないと認識しました。他方で、提示価格が十分ではないと考える既存株主が望むのであれば非上場化後も株主として残ることは、すべてのプライベート・エクイティ・ファンドにとって許容可能なものでした。

SRCは、ファンドを迎え入れることは価値の実現に繋がる可能性がある一方で、東芝がファンド傘下になった際にファンドが実施するであろう施策の一部を東芝自身で実施し、東芝が価値のアップサイドを既存株主に対して確保できるのであれば、その価値のアップサイドが不要にプライベート・エクイティ・ファンドに帰属してしまうことは避けたいという、一部株主からの意見も重視しました。

また、プライベート・エクイティ・ファンド各社は、以下を含む不確定要素を指摘しました:①現在の政治状況における外為法及び世界各国の独占禁止法/反トラスト法上の課題については、克服不可能ではないものの複数の国が絡む複雑なものでありかつ状況が刻々と変化しており、当局による慎重な審査の結果、一定の制限や是正措置が求められる可能性があること、②入札プロセス及びTOBの実施に要する6–12ヶ月に加えて、一定の国における独占禁止法/反トラスト法制のためクロージングが18ヶ月程度以上遅れる可能性があること、そして③キオクシアホールディングス株式会社(旧東芝メモリホールディングス株式会社、以下「キオクシア」)の今後の展開が足元確定しておらず、この極めて重要な資産について、現時点での価格算定が難しいこと。

さらに、全てのファンドが事前に執行部と足並みが揃っていることの重要性を指摘しましたが、従業員の採用及び維持や、顧客離れ(特に、事業内容の機微性に照らした場合に公共セクターの顧客について)など、非上場化が事業に及ぼし得る負の影響について、執行部はSRCに対し懸念を示しました。一方でSRCは、プライベート・エクイティ・ファンド(及びその投資先企業のいくつか)から、過去の事例ではそのようなリスクを完全ではないがほとんどを軽減できたという経験を共有された点についても考慮しました。

SRCからの詳細な報告を受け、取締役会は、東芝を非上場化する計画に時間とリソースを割いてきた、実績あるプライベート・エクイティ・ファンドとの間で既に相当量の下準備が行われたと理解しています。

スピンオフ計画:価値を顕在化させるための非常に魅力的なオプションとして浮上

潜在的な投資家はキオクシア持分を評価することの難しさを繰り返し指摘しました。それを主な理由としてSRCは、上記戦略的オプションに加え、キオクシア持分を東芝の株主の皆様に非課税で譲渡する、あるいはキオクシア及び他の非中核事業を単一の売却用の会社に移すことでストラクチャーを整理し今後の計画を進めやすくできないか、という点についても検討を行いましたが、こうした案は実務的な困難を伴うものでした。その一方で、こうした検討を通し、そしてそれまでの協議の延長として、9月にスピンオフ計画のコンセプトの検証が始まり、SRCは執行部に対し、このアプローチを詳細に検討するよう求めました。

執行部は当該コンセプトを検証し、数週間後、このような取引は容易ではないものの、実現可能かつ価値を生み出すものであると思われたことから、SRCに検討を仰ぐべく、スピンオフ計画を織り込む形でMTBP案を修正しました。

SRCは、日本で近時導入された税制適格スピンオフのストラクチャーを活用し、東芝を以下でご説明する3つの独立会社とすることで、東芝は包括的かつ税務上のメリットのある方法で、当社が持つ構造上の複雑さの大部分を取り除き、コングロマリット・ディスカウントを縮小させることができると考えました。

2つの新たな、それぞれの事業に特化した上場企業が誕生することとなります。スピンオフは「中核か非中核か」ではなく事業内容に基づいてなされ、一方はインフラストラクチャーとエネルギー、そしてもう一方は電子デバイスに特化することとなります。各事業により特化することで、それぞれの事業上のニーズにより適合した取締役や経営人材を採用できるようになり、各事業の特性や資本配分の必要性に合った方法で資本やリソースを活用した成長戦略や改革を実行出来るようになります。スピンオフによって執行部の焦点が定まり、各会社の従業員のモチベーションは向上し、顧客のニーズにより深く向き合い焦点を当てることができるようになります。

一方、既存の東芝は、実質的には、キオクシア持分の大部分を売却し、売却益の全てを、それがスピンオフ計画の円滑な遂行を妨げない範囲において実務上可能な限り速やかに株主の皆様に還元するための独立した会社となります。また、その戦略的方向性については今後さらなる検討が行われますが、東芝 テック株式会社(以下「東芝テック」)持分もこの会社に残ることとなります。東芝が有する多大な繰越欠損金は、キャピタルゲイン課税に対して活用できます。

スピンオフ計画には約100億円の想定コストがかかり、上場に関連する費用が重複してかかるものの、継続的な販管費削減により相殺されると考えています。

SRCは、スピンオフ計画が2023年度下期までかかる可能性があり、またスピンオフ計画の詳細については更なる検討を要すると考えている一方、アドバイザーの協力を得て実施した検証を踏まえ、スピンオフ計画の実現可能性を実質的に減殺すると考えられるような当局からの承認に係るリスクは当社として認識していないことを確認しました。

定量化は難しいものの、SRCは、本計画によりコングロマリット・ディスカウントが縮小すること、スピンオフ後の各社がそれぞれの価値創造戦略をより遂行しやすくなること、そしてキオクシア及び東芝 テックの株式を、株主が直接保有する単独の会社に置くことにより、総合的に見た東芝の企業価値に対し、非常にポジティブな効果が出ると判断しました。

SRCの結論:税制適格による本スピンオフ計画は、より高い確実性と株主の皆様にとっての
選択肢の増大をもたらし、より多くの価値を創造するポテンシャルを有する

SRCは11月5日と12日、結論を出すための会議を行いました。上記の各戦略的オプションについて定性面及び定量面から比較検討し、SRCメンバー及びSRCのアドバイザーも交え入念な議論がなされました。

SRCは、スピンオフ計画が株主の皆様にとって非常に魅力的であると考えました。その根拠としては、税務上のメリットがある方法で、3つの会社の株式の総合的な価値をより確実に顕在化できる上、各会社の株式の保有・売却を株主の皆様が自由に決められるという意味において、株主の皆様にとって選択肢が増えることが挙げられます。

SRCは、プライベート・エクイティ・ファンドからのフィードバックによると、恐らく最大のバリュエーション変動要因となるキオクシア持分を単体の会社に置くことによって、現金化に際し透明性が確保され、また東芝全体の買収者が現れた場合にその者にキオクシア持分に係る利益が帰属することを防げる、と強く感じました。

SRCとしては、このスピンオフ計画は他の戦略的オプションと比べ、より優れた価値創造ポテンシャルをより高い確度でもたらし、東芝の株主の皆様及びその他のステークホルダーにメリットをもたらすと判断しました。

MTBPドラフトは将来大きな価値向上を実現する可能性もありますが、①東芝がこれまで数値目標を達成できなかったことが多いことを踏まえると、中核事業における価値創造がかなり不確実であり、②非中核事業の売却に関連する執行リスクや税務上の損失が生じ、さらに③その上でも、依然として東芝のコングロマリットとしての姿を完全に解消することはできません。

こうした懸念については、「スマート・マネー」のマイノリティ投資家とパートナーシップを組むことで一定程度対処が可能であるものの、そうした投資家から協力について確約を得るためには、一般株主の皆様の利益と必ずしも整合しない取引ストラクチャーが必要と考えられます。

そして上述の通り、SRCはプライベート・エクイティ・ファンド各社のTOBへのアプローチについて理解すべく多大な労力をかけましたが、その他の株主の方からの、東芝がファンド傘下になった際にファンドが実施するであろう施策の一部を東芝自身で実施し、東芝がファンドに代わって価値のアップサイドを既存株主の皆様に対して確保できるのであれば、その価値のアップサイドが不要にプライベート・エクイティ・ファンドに帰属してしまうことは避けたいとの意見も重視しました。

その結果SRCは、東芝が足元で速やかな株主価値向上策を実施し、自身で生み出せる価値についてはそれが適正に、プライベート・エクイティ・ファンドの想定TOBプレミアムが適用される前の株価に反映された状態にすべきである、との見方を固めました。

そしてSRCは、スピンオフ計画こそが東芝がまず自身で取りかかるべきことである、と結論づけました。これにより、入札プロセスが直ちに開始されたと仮定した場合に実現できるであろう価格水準を超える東芝の価値を実現できる可能性があります。

取締役会への推奨:スピンオフ計画及び企業価値向上に向けた追加的なコミットメント

上記に基づきSRCは取締役会に対し、スピンオフ計画を円滑に遂行しつつ、準備段階の間も企業価値を向上させるため、東芝が以下の追加的コミットメントを行った上でスピンオフ計画を支持するよう推奨しました:

1. 東芝のあらゆるリソースを投入し、スピンオフ計画を遅くとも2023年度下期(可能であれば前倒しで)に成功裏に完遂する責任を負った移行チームを組成(必要に応じて外部専門家や新たに採用される幹部役職員も追加)すること
2. キオクシア株式については、株主価値の最大化を図りつつ、実務上可能な限り速やかに現金化し、手取金純額についてはスピンオフ計画の円滑な遂行を妨げない範囲で、全額株主還元に充当すること。また、東芝テックを成長させつつ、東芝における持分の取り扱いについては継続的にレビューを行うこと
3. レバレッジの引き上げ及び自己株式取得(スピンオフ計画の円滑な遂行を妨げない範囲において)を行い、東芝がバランスシートの非効率性という問題に対処するとともに、スピンオフ計画が完了するまでの間、株主の皆様が短期的なメリットを享受できるようにすること
4. スピンオフ計画を実施した結果、各社が求める人材像がより明確になることを踏まえ、入念な外部及び海外人材プールのサーチを行い、各会社において適切なマネジメント・チームを組成すること
5. 各会社がアクセスできるようになるであろうより多くの潜在的な候補者とのパートナーシップの機会を模索すること
6. M&Aや生産能力の拡大を含め、R&D及び中核事業には慎重な投資を行いつつ、事業の売却を含むポートフォリオの更なる見直しの継続とコスト削減を行うこと
7. ガバナンスを強化してESG分野のリーダーとなり、独立した会社それぞれにサステイナビリティを根付かせるとともに、ガバナンス強化委員会の推奨策を実施すること

SRCは、来年1–3月に実施を予定している臨時株主総会で株主の皆様に諮られるまで、スピンオフ計画の準備を引き続き監督してまいります。またその時点で、取締役会にステアリングコミッティーを組成し、そこにSRCメンバーを含めることで、本計画を成功裏に完了させるための継続性と説明責任を確保する予定です。

取締役会は11月12日にSRCからこの推奨案を受領し、スピンオフ計画の承認を全員一致で決議いたしました。

SRCから最後に:徹底したプロセスが不可欠

SRCは、全ての株主の皆様及びその他のステークホルダーを満足させる解は無いことを認識しています。実際、取締役会に対しすぐに入札のプロセスを始めるよう主張した株主の方もいましたし、一方で他の案を同程度に支持し、上場企業としての東芝をサポートしたい、という株主の方もいました。SRCとしては、入札プロセスを進めてしまうのではなく、当社が取り得るあらゆる選択肢を検討する必要性を強く感じておりました。

よって取締役会は、ご提案する臨時株主総会に向けた期間、そして当局、専門家及びその他のステークホルダーとの協議が継続される今後数週間・数ヶ月間に向けて、詳細なロードマップを引き続き作成いたします。SRCは、東芝の株主の皆様及びその他のステークホルダーにとって総合的に正しい道筋を決定すべく、日本企業の取締役会に法的に求められる水準をはるかに超え、かつ過去のやり方への先入観にとらわれず、非常に入念なプロセスを取ってきたと確信しております。

SRCとして、この重要な取り組みにご協力いただいた全ての方々に感謝すると共に、東芝が株主の皆様に約束したこのエキサイティングな変革を監督・実施するにあたり、今後も緊密に連携していくことを楽しみにしております。

本声明の内容はSRCが認識し又は入手可能な情報に基づくものです。SRC、そのメンバー及びアドバイザーは、本声明に含まれている情報
若しくは分析又はこのレターに一定の情報若しくは分析が含まれていないことに関して何ら責任を負わず、また、いかなる者も、
本声明に起因又は関連して、SRC、そのメンバー及びアドバイザーに対し何らの権利又は請求権を有しないものとします。

(注意事項)
・本書は、本再編に関する情報提供を目的としてのみ作成されたものであり、日本、米国その他の地域において、当社、当社の子会社その他の会社の有価証券に係る売却の申込みもしくは購入申込みの勧誘を構成するものではありません。
・本書には、当社グループの将来についての計画や戦略、業績に関する予想及び見通しの記述が含まれています。
・これらの記述は、過去の事実ではなく、当社が現時点で把握可能な情報から判断した想定及び所信にもとづく見込みです。
・当社グループはグローバル企業として市場環境等が異なる国や地域で広く事業活動を行っているため、実際の業績は、これに起因する多様なリスクや不確実性(経済動向、エレクトロニクス業界における激しい競争、市場需要、為替レート、税制や諸制度等がありますが、これに限りません。)により、将来予測に関する記述により明示又は黙示されたものとは異なる可能性がありますので、ご承知おきください。詳細については、有価証券報告書及び四半期報告書をご参照ください。
・注記が無い限り、表記の数値は全て連結ベースの12ヶ月累計です。
・注記が無い限り、セグメント情報における業績を、現組織ベースに組み替えて表示しています。
当社はキオクシアホールディングス(株)(旧東芝メモリホールディングス(株)、以下「キオクシア」)の経営に関与しておらず、同社の業績予想を入手していないため、当社グループの財政状態、経営成績またはキャッシュ・フローの見通しにはキオクシアの影響は含まれておりません。
・本書に記載のスピンオフの方式については、当社株主総会の承認が得られることや、関係当局等の審査要求事項を満たすことを条件としております。
・適用ある法令等(有価証券上場規程及び米国法を含みます。)や税制を含む各種制度の適用・改正・施行の動向、関係当局の解釈、今後の更なる検討等その他の状況によっては、本再編の実施に想定よりも時間を要し、また、その方法等に変更が生じる可能性があります。