「求め続けてきたラグビーが出来るようになった」
東芝ブレイブルーパス東京 小川高廣、德永祥尭共同主将が語った覚醒の予感

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text by 生島淳 Jun Ikushima
photo by Kiichi Matsumoto

強い「東芝ブレイブルーパス東京」が戻ってきた。

 リーグワン元年の昨季、ブレイブルーパスはセミファイナルに進出、共に東京・府中市に本拠地を置く東京サンゴリアスと対戦した。前半は17対17の同点。最後は24対30と惜しくも敗れたが、ブレイブルーパスは輝きを取り戻しつつあることを示した。
 新たなシーズンを迎えるにあたり、小川高廣と德永祥尭のふたりの共同キャプテンに話を聞いた。

――昨季はシーズンが深まるにつれて、「強い東芝」が戻ってきた感じがしました。おふたりにとっては、どんなシーズンでしたか。

小川 自分は常に、ファンのみなさんが見ていて面白いラグビーをしたいと思っているんですが、セミファイナルは一番楽しいラグビーができたんじゃないかと思います。プレーしていて、楽しかったんです。自分たちが楽しんでしまいました。

德永 昨季はケガ人が少なく、練習が充実していたと思います。誰が試合に出ても、一貫性を持ってプレー出来たのが結果につながった気がします。

 

――リーチマイケル選手に話を聞いた時、トッド・ブラックアダー ヘッドコーチも今季で4シーズン目を迎え、ヘッドコーチの考え方が浸透してきたとおっしゃっていました。

德永 当初はトディ(注・ヘッドコーチのニックネーム)が描いていた「空いたスペースを活用して攻める」というコンセプトを実現するスキルが選手たちになかったんです。ようやく、昨季の途中からプレーで表現できるようになってきた気がしますね。

 

――開幕戦から比べて、シーズン後半に充実していたのは、そうした理由があったんですね。

德永 それは間違いないと思います。

 

――かつて東芝といえば、武骨に、ガツガツと当たっていく激しいイメージがありましたが、その風土が戻ってきた気がします。

小川 トディはラグビーだけでなく、全員が同じ方向を向いていけるように考えてますね。東芝が培ってきたカルチャーを大事にしてくれてます。

德永 トディは51歳ですけど、いまだにフィジカルがすごいんですよ。練習でも、自分たちのタックルを受けたりして。トディが率先してハードワークをするので、選手も頑張るしかないです。

小川 トレーニングでエアロバイクを漕いでも速い。

德永 よく分からないくらいすごいですよね(笑)。きっと、現役を引退した後も、ハードワークが習慣だったからこそ、いまも僕たちと一緒に練習ができるんでしょう。

●東芝ブレイブルーパス東京のカルチャー

――先ほど、小川キャプテンから、トッド・ブラックアダー ヘッドコーチは東芝ブレイブルーパス東京のカルチャーを大事にしてくれているという話がありましたが、「ブレイブルーパスのカルチャー」とはどういうものなんでしょう

小川 コミュニケーションでしょうね。でも、ただ風通しがいいとかじゃないんです。一体感はあるけれど、とことんやりあう時はやりあう。

 

――衝突から生まれるエネルギーがあったんですね。

德永 練習の段階から、喧嘩になってもおかしくないくらい、熱い練習が増えました。

小川 一時期、そういう練習が減ってたかもしれないね。

德永 昨季あたりから、グラウンドで一触色発みたいなことも起きてきたんですが、仲が悪いからとかそういうことじゃなくて、ラグビーに対する本気度が衝突を生むんですよね。自分は、練習で成長できている実感があります。

小川 もともと、思ったことは言い合うカルチャーはあったよね。

德永 ありました。話し合うことで、どうしてミスが生まれるのかが理解できるわけです。グラウンドで熱く言い合ったとしても、あとで一緒に風呂で話すことで解決できるし、それが良いプレーにつながっていくのは間違いないです。トディも「ストレートトークが大切なんだ」と言ってくれてます。

小川 10月に鹿児島で合宿を行ったのですが、そのときも練習だけでなく、フィールド外でトディはじめ、いろいろなメンバーとコミュニケーションを図れたのはチームの財産になると思います。

●2年目のリーグワン

――いい形で準備が出来ているようですね。今季はどんなラグビーを見せたいと考えていますか。

小川 激しさにはこだわっていきたいです。他のチームより上に立ちたいと思ってます。

德永 フィジカルの練習は、昨季より増えてます。トディは「ユニークなラグビーをしよう」と話しているんですが、東芝らしくフィジカルでどんどん前進し、そこからスペースに運ぶラグビーを実現したいですね。

――昨季は4位でした。強敵も多いですが、さらに上に行くためには何が必要でしょうか。

小川 一貫性を徹底することでしょうね。どの相手に対しても、同じラグビーができるか。メンバーが変わったとしても、東芝ブレイブルーパス東京のラグビーをしていくことが大切だと思っています。

●東芝ブレイブルーパス東京のチームスピリット

――新戦力も活躍していますね。特に、ワーナー・ディアンズ選手は日本代表でも大活躍を見せています。

德永 高校を卒業して入ってきたばかりのころは、未熟なところもあったんです。特に、ラインアウトではジャンプ、キャッチともに不安定でした。ラインアウトでは、ジャンパーを持ち上げるリフターの力も重要なんですが、よく考えたら、彼ほど重たい選手を持ち上げられる高校生がいなかったのかもしれません(笑)。それがブレイブルーパスに入ったらどんどん上手くなっていって、今や日本代表でもメインジャンパーになってるほどです。

小川 ワーナーは吸収力が高いと感じます。オールブラックスとの試合でチャージをしてからそのままトライをしましたよね。あのプレーは、ブレイブルーパスでも、ずっと徹底してやっていることなんです。

德永 自分の仕事をすごく理解してプレーしていますよね。

 

――スクラムハーフの小川選手は、コンビを組むスタンドオフの中尾隼太選手が日本代表に選ばれていますね。

小川 10番、12番というバックスのインサイドに、いい若手が育ってきました。中尾をはじめとして、松永拓朗、森勇登、眞野泰地と、それぞれタイプの違う選手たちが持ち味を出せば面白いラグビーをお見せできると思います。期待してください。

――東芝グループには、「人と、地球の、明日のために。」という経営理念がありますが、東芝ブレイブルーパス東京にも、チームスピリットがありますよね。

小川 ブレイブルーパスは、これまでチームが表現してきたラグビーを「猛勇狼士」という言葉で表しています。チームメンバーだけでなく、OBの方にもご意見をいただいて決めました。チームスピリットを言語化することによって一つひとつのプレーの質が高まり、チームの在りかたに一貫性がでると思っています。みんなが苦しい時に立ち返る場所というべきでしょうか。

德永 僕自身もチームに入って、やってきたラグビーを文字で起こした言葉なので、初めて見た時にも違和感がありませんでした。その意味で、受け継がれてきたものが脈々とあるんだと思います。

 

――さて、いよいよ開幕が近づいてきました。初戦は12月17日にビジターで埼玉ワイルドナイツ戦、そして最初のホストゲームは、12月24日のクリスマスイブに、味の素スタジアムにブラックラムズ東京を迎えます。

小川 初戦で昨季のチャンピオンチームと戦えるのはうれしいです。ようやく、自分たちも優勝を狙える位置に帰ってきた手ごたえもありますし、試合が楽しみです。

德永 トッド・ブラックアダー ヘッドコーチになって4年目、ようやく求め続けてきたラグビーが出来るようになったと感じているので、楽しいラグビーをお見せできればと思います。

◆プロフィール

小川 高廣 Takahiro Ogawa

1991年3月18日生まれ、福岡県出身。東福岡高から日本大を経て、2013年から東芝ブレイブルーパス東京でプレー。2019年から共同主将を務める。SH。170cm、77kg。

德永 祥尭 Yoshitaka Tokunaga

1992年4月10日生まれ、兵庫県出身。関西学院高から関西学院大を経て、2015年から東芝ブレイブルーパス東京でプレー。2019年から共同主将を務める。NO.8/FL。185cm、105kg。

東芝は、東芝ブレイブルーパス東京を応援しています。

東芝ブレイブルーパス東京公式ページ
https://www.bravelupus.com/