― 将来、太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギー発電が普及していくと、
  電力供給を安定化させる必要がありますか?

― そうですね。東芝が推進する「VPP」が安定した電力供給に貢献します。

「パリ協定」の採択から丸5年が経過し、2050年までに脱炭素(カーボンニュートラル)社会を目指す取り組みが加速している。この脱炭素社会の実現に向けて大きな役割を担うのが、太陽光・風力をはじめとする再生可能エネルギー(再エネ)による発電だ。しかし再エネ発電は天候の影響を受けやすく、電力の安定供給が難しいという課題もある。そうしたなか、再エネの導入拡大と電力の安定供給を可能にする新しいエネルギーサービス「バーチャルパワープラント(仮想発電所、以下VPP)」が注目されており、そのVPP事業をいち早く立ち上げたのが東芝だ。東芝が推進するVPP事業は、脱炭素社会の実現に向けてどのように貢献していくのだろうか。

脱炭素社会の実現に向け再エネの課題解決が急務

小園 典晃 

東芝エネルギーシステムズ株式会社
取締役
グリッド・アグリゲーション事業部 副事業部長

 地球温暖化対策に関する新たな国際的な枠組み「パリ協定」が採択されてから5年以上が経過した。この間、2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロを長期目標に掲げる国が相次ぎ、日本でも菅義偉首相が就任後初の所信表明演説で「2050年に脱炭素(カーボンニュートラル)社会の実現を目指す」と表明。国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)との相乗効果もあって、官民挙げてのさまざまな取り組みが始まっている。

 それらの取り組みのなかでも、脱炭素を直接的に後押しするものと期待されているのが、風力・太陽光・バイオマス・地熱・水力などの再生可能エネルギー(再エネ)による発電だ。現在の日本における主力電源は石油・石炭・液化天然ガスを燃料とする火力発電だが、火力発電はその過程において温室効果ガスを排出する。それに対し再エネは、温室効果ガスを排出しない。またエネルギー自給率を向上させ、災害に強い分散型電源の導入拡大にも役に立つ。

 脱炭素に効果的な再エネは、2018年に政府が発表した「第5次エネルギー基本計画」において、主力電源化を目指すことが打ち出された。また、2020年6月には「エネルギー供給強靱化法」が成立するなど、再エネの導入拡大に向けた動きも加速している。

 しかし、再エネを主力電源化するには課題も指摘されている。再エネは天候によって発電量が左右される不安定な電源であり、なおかつ小規模な分散型電源なので、電力の需給バランス調整が難しい。脱炭素社会では、例えばガソリン車がEV(電気自動車)へ置き換わるなど、現在よりも電力消費量がはるかに増大すると予想される。だが需要に応える電力が供給できなければ、経済活動や国民生活に深刻な影響を及ぼしかねない。脱炭素社会の実現に向け、再エネの課題解決は急務となっているのだ。

 

再エネの不確実性を調整する東芝のVPP事業

 このような再エネの課題を解決する新しいエネルギーサービスとして注目を集めているのが「VPP」だ。VPPは、再エネ発電施設や蓄電設備など分散する電源を仮想的に束ね、あたかも一つの発電所のように機能させることができる。それぞれの電源をIoT機器を使って遠隔制御し、電力需給を予測しながら安定した電力供給を可能とする最先端の技術だ。

 このVPP事業者として名乗りを上げたのが、1875年の創業から発電・送配電・蓄電などのエネルギー事業を150年近くにわたって展開する東芝である。東芝グループのエネルギー事業領域を担当する東芝エネルギーシステムズ 取締役の小園典晃氏は、近年とくに再エネ事業に注力しており、その流れのなかでVPP事業にたどり着いたと話す。

 「東芝グループは現在、中期経営計画『東芝Nextプラン』のもと、2020年度から2022年度までの3年間で、約1,600億円を投資して再エネ事業を推進しています。日本政府が表明した2050年カーボンニュートラルに向けて、先進技術となる次世代の太陽光パネル・洋上風力関連や、再エネ接続に重要な直流技術など、研究開発を積極的に進めています。しかしながら再エネの導入拡大を図るには、そのままでは安定した電力供給が難しいという再エネの課題を解決しなければなりません。そこで東芝は、これまでに培ってきた、電気の使用量と発電量のバランスを保つ需給運用を担う中央給電指令所や、電気の流れる系統を守る系統運用を担う基幹系統給電所、電力需給予測・管理などの系統安定化技術を再エネの分散型電源に応用し、再エネの不確実性を吸収できる調整力を備えたサービスを提供できるVPP事業にいち早く取り組み始めました」(小園氏)

 東芝エネルギーシステムズで再エネ領域を担当し、東芝ネクストクラフトベルケ株式会社の代表取締役社長も務める新貝英己氏は、東芝のVPP事業は、2010年にスタートした横浜市の「スマートシティ構想」に参加したところから始まったと振り返る。

 「スマートシティ構想が進むなかで、2018年には横浜市の小中学校にリチウムイオン蓄電池を設置し、平常時は需給調整用に制御し、非常時には地域で電力を使用するという実証実験を電力会社と協力して実施しました。この間、電力需要が逼迫した際に節電を要請して依頼に応えた需要家にインセンティブを付与する『ネガワット取引』も始まり、分散型電源を束ねる必要性が高まりました。これらをきっかけにVPP事業を開始しました」(新貝氏)

新貝 英己 

東芝エネルギーシステムズ株式会社
グリッド・アグリゲーション事業部 マーケティングエグゼクティブ/営業統括上席部長
兼 東芝ネクストクラフトベルケ株式会社 代表取締役社長

図1:東芝のVPP事業

2022年4月に始まるFIP制度に備え
ドイツ企業との合弁会社を設立

 エネルギー供給強靭化法による再エネ主力電源化に向けた取り組みの一環として、送配電事業者が固定価格で電力を買い取る「FIT(Feed In Tariff)」から、発電事業者が直接取引した市場価格に補助を上乗せする「FIP(Feed In Premium)」へと制度が見直され、2022年度に移行することが決定している。

 こうした中で、東芝のVPP事業での重要な役割の一つが、再エネ発電事業者のリスクを最小化することである。「FIPへの移行により再エネ発電事業者は、最適な市場取引や相対取引による収益性の維持、正確な予測に基づく計画値同時同量発電が求められるというリスクにさらされます。東芝のVPP事業は、そうした再エネ発電事業者のリスクに対応するために、再エネ発電事業者の施設・設備の制御・システムの運用を代行するとともに、電力をまとめて取引するアグリゲーターとしての機能を有しています」(新貝氏)

 こうした再エネをめぐる環境変化のなか東芝は、ドイツのVPP事業者であるネクストクラフトベルケ社と提携し、2020年11月に合弁会社「東芝ネクストクラフトベルケ」を設立し、新貝氏が代表取締役社長に就任した。

 「ドイツでは2012年にFITからFIPへの移行を経験しており、そのなかで事業を伸ばしてきたのがネクストクラフトベルケです。同社は現在、ドイツを中心に欧州9カ国で事業を展開し、現在、約1万アセットに上る分散型電源をIoT機器でつないだVPPシステムを運用しています。新会社では、東芝のノウハウにネクストクラフトベルケ社のデジタル技術を組み合わせ、計画値同時同量/トレーディング支援サービスの提供を開始します」(新貝氏)

図2:東芝とネクストクラフトベルケの強みを結集(イメージ)

東芝のVPP事業がもつ3つの大きな強み

近年VPP事業に参入する事業者も登場するなか、東芝のVPP事業にはどのような強みがあるのだろうか。新貝氏は、東芝のVPP事業には3つの大きな強みがあると話す。

 「一つは、国内トップクラスのシェアを誇る太陽光発電EPC事業を通じて取引関係にある再エネ発電事業者との関係を販路として生かせるところです。二つ目は、電力会社に鍛えられた送配電系統技術です。また、高精度の電力需要予測技術には定評があり、これを市場価格予測に応用できることも強みになっています。そして三つ目が、ネクストクラフトベルケ社のオペレーションノウハウを活用できることです。日本にはなかったトレーディングのノウハウをすぐに活用できます」(新貝氏)

 このような強みを生かしながらVPP事業をリードする東芝では、2020年12月にVPPのサブスクリプションサービス「Toshiba VPP as a Service」の提供を開始した。このサービスは、再エネ発電事業者や電力小売事業者を対象に「太陽光発電量予測」「電力需要予測」を提供するというもので、予測には東芝が開発したAI技術が搭載されている。ちなみに太陽光発電量予測は、2019年に東京電力と北海道電力が共催した太陽光発電量予測技術コンテストでグランプリを受賞。電力需要予測は、2017年に東京電力が主催した電力需要コンテストで1位を獲得するなどの実績がある。

 VPPの導入も始まっている。前述した横浜市の「スマートシティ構想」をはじめ、東北電力・仙台市と連携して始めた実証実験では、東日本大震災後に環境省の補助金で導入された非常用蓄電池にIoT機器を取り付け、太陽光発電で余った電力を蓄電池にためるという実証実験を行っている。

エネルギーをデザインする会社として市場をけん引

 東芝では今後、再エネ発電事業者と需要家の両方をトータルに束ね、需給バランスを保ちながら価値を生み出す「日本型VPP」の実現に向けた取り組みを推進するという。現在は電力会社と連携しながら、再エネの地産地消、レジリエンス、系統安定などを目的に、再エネ発電事業者と地方自治体が所有する太陽光発電や蓄電池等の分散型電源を活用した需給一体型の取り組みを進めている。

 このようにVPP事業を推進する東芝には、日本の電力市場をけん引してきたという自負がある。

 「東芝は、再エネも含め発電・送配電・蓄電の技術がすべてそろっており、エネルギーをデザインする会社として、日本市場のみならず世界中に事業を広げていきたいと考えています。脱炭素社会が到来して再エネが今よりも身近になっていく中で、VPPが一般には気づかれない存在であったとしても、再エネを安心して利用できる社会を支えていくことが、東芝の使命だと考えています」(小園氏)

 

※2021年3月15日~2021年4月24日(広告掲載期間を記載)に日経電子版広告特集にて掲載。
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