Inter BEE 2022[展示会・イベント レポート]

展示会レポート

本展示会では東芝グループブースにご来場いただき、誠にありがとうございました。
今回の展示の中から東芝グループ各社のトピックスをご紹介します。

今回の展示会には、東芝インフラシステムズ、東芝ライテック、東芝デジタルソリューションズの3社が出展いたしました。

東芝インフラシステムズの主要展示は、まず「東芝の考えるDX(デジタルトランスフォーメーション)」に基づく、「次世代放送システム」です。

総務省が検討しているデジタル規制緩和に伴い、現在各放送局や制作現場のオンプレミスで所有している各種放送システムを、センター化・一元化していく流れが今後近い将来の主流となると考えられます。

様々なITシステムやサービスがクラウド化していくのと同様に、放送システムも映像伝送のIP化および放送設備クラウド化が進められています。一般的なクラウドサービスは、ベストエフォート型の場合が多く、使用状況によっては速度の低下やサービス停止もやむを得ないものと捉えられていますが、放送システムにおいてはそういったサービス品質低下は絶対に起こせません。

そこで、東芝が提案するのは、クラウドとオンプレミスを併用する「クラウド利用システム」です。基盤となるオンプレミス機器は規模を縮小して保持し、コントロール側の機能をクラウド化し、コンテンツ管理や送出管理、スーパー処理といった操作を、どこからでもPCブラウザで利用できる、ニューノーマル時代にふさわしいマスター・バンクシステムを実現。
また、放送局で取り扱っている映像・音声信号をIP化することでシステムの柔軟性を持つことができるため、「デジタルツインシステム」の構築も可能となり、オンプレミスと同じシステムをクラウドに持つことも可能となります。さらには見逃し配信やWEB配信サービスなど、通常のテレビ放送以外の分野にも拡大し、放送素材やデータの二次活用のためのプラットフォーム構築もご提案します。

今回のInterBEEでは、AWS展示ブースや、別ホールのIP PAVILIONとネットワークを接続し、これらの次世代放送システムを利用してリアルタイムで映像の送出をする様子を、デモンストレーション展示いたしました。

また、もう1つの主要展示はデジタル放送送出機器です。

地上デジタル放送開始から来年で10年となり、機器更新の需要が高まっています。東芝では、2016年から継続的に出展している、既設機器と同様のサイズ感・インターフェイスで、置き換えが簡単かつ省電力化を実現した送受信機器のほか、遠方の中継局や送信所にある機器も、オンラインから監視・制御ができるリモコン装置も展示。

今後の放送業界の省人化をサポートする技術として、注力して事業を進めてまいります。

東芝ライテックでは、従前の単純な照明器具からLED照明にシフトするに伴い、その制御システムや周辺技術についても、多種多様に開発を進めています。その一環として本展示会では、劇場・スタジオ向けのDXソリューション「アートライティング・デジタルツインサービス」を出展いたしました。

このサービスの中心となる「ArtaBase(アルタベース)」は、劇場内のロビー・客席・舞台や、バックヤード・調光操作調整室・倉庫・搬入経路にいたるまで、すべてを撮影し、3D映像として構築いたします。

このデータを活用して、臨場感あふれるリアルな3D映像で劇場内を再現する「Theatre Concierge(シアターコンシェルジュ)」では、利用者があらかじめ劇場の下見をしたり、チケット販売時に座席の位置を案内する、また出演・設備側の担当者が、舞台を始めとした各所のサイズを測ったり、機材・設備の配置、バックヤードからの導線を確認しておくなど、今まで劇場に足を運ばなければできなかった様々な事前準備が、すべてオンラインで可能となります。

同じく「ArtaBase」を使用した「ベクターワークス&VISON」による、舞台での3D照明シミュレーションをご紹介しました。3D仕込図テンプレートとシミュレーションを元に、事前に調光卓のショーデータを作成することで、高度化・複雑化するLED舞台照明の表現・制御の時短に役立ちます。

さらに照明器具の設置・保守点検にもこの「ArtaBase」を活用しています。「サイバーシナプス」では、仕込図情報を作業員のARグラスに表示し、器具設置の補助、保守情報の確認、更に操作方法を映像で確認する等、照明器具管理の効率化ソリューションをご提案しました。

LED照明器具関連の展示は4点です。

「フルカラーLED」はスポットライトとホリゾントライトの2種、そのうちホリゾントライトは、アッパータイプとロアータイプのそれぞれについて、高さのある舞台に適したエクステンドタイプと、横に広い舞台に適したスプレッドタイプを展示いたしました。

RGBに加えてアンバー・シアン・白(3000K)の6つのチップを搭載したLEDならではの広い色域は、Rec.2020領域の94.2%をカバーし、4K/8K撮影にも対応可能。また、従来のハロゲン照明と違って、LED照明では色調整だけでなくストロボなどのさまざまな照明演出が可能です。

それらの多様な点灯モードは、直感的かつきめ細かなあかりづくりが可能な、専用ソフト「アドバンスドシステム」で制御します。また、器具の冷却はファンレスの自然空冷を採用してるので、静音性を保ち、機器故障のトラブルも削減しています。

これらのLED照明を設置するために新たなコンセプトの「LED照明器具専用バトン」を参考出展しました。従来のハロゲン照明では大電流が必要だったため、それをつなぐケーブルや吊り下げバトンも、太く重いものでしたが、省電力のLED照明器具を吊るす専用バトンは小型・軽量化を実現。ケーブルの軽量化、巻き上げ機の容量減も含め、昇降設備全体でのコストダウンが見込まれます。

このバトンはセンサ搭載により、傾向きや衝突を検知して自動で昇降動作停止、更に照明バトンの表示器の点灯、専用アプリの画面表示、スマートフォンの振動で検知結果をお知らせし、速やかに対処することで安全性を向上しています。

また、スポットライトにもLEDを採用。様々な演出空間に対応するラインナップの中から、「8型LED平凸ナロースポットライト」を展示いたしました。省電力でありながら、配光ムラや色ムラの非常に少ない美しい光を照射し、観客席後方からでも十分に明るく舞台まで照らせる様子を、約20m先の壁面への照射でデモンストレーションいたしました。

その他、人の集まるスタジオや舞台では欠かせない、ウイルス抑制・除菌脱臭用UV-LED触媒装置「UVish(ユービッシュ)」も今回展示しました。従来の卓上型、据置タイプ100に加え、より広い空間に適用した据置タイプ200もラインアップしました。

東芝デジタルソリューションズの出展は、映像ソリューションとして、次世代統合映像コンテンツ管理「meify」(参考出展)、顔認識AI「カオメタ」、音響ソリューションとして「Soundimension 仮想音像/音場制御」、そして撮影現場の機材管理にRFIDを活用した「LADOCsuite/LogiTrace」の4点です。

次世代統合映像コンテンツ管理「meify」は、制作段階から放送後のアーカイブ・マルチユース・複雑な権利処理や、昨今急激に拡大している多種多様な配信など、映像コンテンツに関わる業務を統合的にサポートするシステムです。放送や配信などの原盤管理や権利情報・マルチユースの状況等を、メタ情報とともにコンテンツ軸で一元管理することにより、確実な業務の遂行と業務負荷の軽減をサポートします。テレビ放送向けの映像コンテンツはもちろん、テレビ以外の各種メディアが配信する映像コンテンツ、ミュージックビデオや教育映像など、今後ますます拡大することが予想されるさまざまな映像コンテンツにご利用いただけます。

 

顔認識AI「カオメタ」は、映像に映る被写体から人物を特定する映像コンテンツ向けの顔認識システムです。世界トップレベルの東芝独自の高精度顔認識エンジンを搭載し、顔認識はもちろん顔の位置、大きさ、マスクやサングラスの装着の有無や認識した人数など、映像の利活用に不可欠な高粒度なメタ情報を提供いたします。活用シーンとして、リアルタイム処理による生放送等の被写体確認、映像素材やアーカイブ映像から「マスクを装着していないアップの東芝太郎さん」など具体的な条件設定によるシーン抽出、辞書を登録していない人物も含めたコンテンツごとの出演者一覧による出演者の権利処理、出演者ごとの出演時間と視聴データなどの外部データによるコンテンツ分析などを想定しており、映像コンテンツに関わるさまざまな業務でご利用いただけます。

また、「カオメタ」の新しい活用イメ―ジの一例として、株式会社ChiCaRoが開発を行っている最先端の子育て支援ロボット「ChiCaRo(チカロ)」のデモ機を展示いたしました。保育士不足などによる「保育の質」が問われる保育園・幼稚園の導入を目指す取り組みで、「ChiCaRo」が取得したデータを「カオメタ」により子どもたちひとりひとりを認識・特定し、取得したデータを個別に解析します。そのデータを保育士や保護者に提供することで、保育の質の向上や、保護者の子ども理解の促進をサポートします。

Soundimension 仮想音像/音場制御」は、ソフトウェアによる音響処理により、音の聴こえ方を変えることができるソリューションです。
「仮想音像」は、2つのスピーカーを用い、スピーカーの物理的な位置とは関係なく、後ろから、左から、右後方からなど、任意の方向から音が聴こえるようにすることができるソフトウェアです。オンライン会議が一般化した昨今、話す人ごとに声のする位置を変え、より自然に、ストレスなく会議が進行できるようにすることも可能です。
「音場制御」は、シンプルな3つのスピーカーを用いて空間内に音の聴こえやすい場所と聴こえにくい場所を作り分けるソフトウェアです。例えばATMやセルフレジの音声案内のように、操作者には必要な一方、周囲の人にとっては特に聞く必要のない音を、届けたい場所を狙って届けることも可能です。

仮想音像、音場制御ともに、専用の大掛かりなスピーカーシステムやヘッドフォンなどを用いることなく、汎用的な簡易なスピーカー系を用いてソフト制御により実現できるため、設備投資のコストダウンが可能です。


「LADOCsuite/LogiTrace」は、電波で一気に読み取りが可能なRFID技術を活用した電子タグと、それを読み取るRFIDリーダーおよびデータ管理ソフトのクラウドサービスです。放送業界では、多数の機材がロケ現場などに日々貸し出されていますが、その積み込みや返却チェックには多くの手間がかかります。
「LADOCsuite/LogiTrace」を使えば、各機材に電子タグを貼付し、RFIDハンドリーダーをかざすだけで数秒で機材情報の読み取りができ、貸出機材データと照合することで、積み込みの過不足や返却漏れを簡単に発見することができます。

これからも、先端テクノロジーで物流現場の自動化・デジタル化ソリューションを実現する東芝グループにご期待ください。