自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展2019[展示会・イベント レポート]

展示会レポート

本展示会では東芝グループブースにご来場いただき、誠にありがとうございました。

今回の展示の中から東芝グループ各社のトピックスをご紹介します。

東芝デバイス&ストレージは、例年展示している自動車のコンソールを模したディスプレイで、今回は「AI技術搭載画像認識プロセッサ Visconti™」をご紹介しました。
運転支援のための画像認識技術は、従来、多数の画像パターンを辞書に蓄積し、そこから照らし合わせて道路状況を判断(歩行者,車両,白線,標識などを認識)していましたが、AI処理専用のDNN IPを搭載したプロセッサである第5世代Visconti™は、自動車の一部や半分ガードレールに隠れた歩行者といった、パターン化されていない形状の対象物でも、ディープニューラルネットワークによる学習で判断・認識できるため、これまでより更に高精度な認識が可能になります。

展示したディスプレイでは、従来のVisconti™で認識できていた対象物を緑枠で、更に今回の新たなDNN IP iで追加認識した対象物を赤枠で表示し、認識精度の高性能化をアピールしました。

「車載イーサネットブリッジIC」は、これまでコンピュータ通信に利用されていたイーサネット規格を使って、安定したリアルタイム通信を車載各種機器に活用するブリッジICです。
これまでの車載機器は機器ごとにワイヤハーネス接続が必要になり、その総量が40kgにも及ぶ膨大なものでしたが、車載用イーサネットでは、コンピュータで行っているように情報・音楽・映像などを1本のケーブルで送受信することができる上、ハブにケーブルを指すだけで簡単に接続できるので、車内ネットワーク構成を劇的にスリム化することが可能です。また、使用されるツイストペアケーブルは軽量・安価で、最大1Gbpsの通信を実現。欧州ではすでに実用化されており、日本での上市を目指しています。

また、MOSFET 2個とコントローラ1個が小型パッケージに封入され、パワースライドドア,パワーバックドア,パワーシートなどをコントロールする事が可能なモータドライバICのデモンストレーション用モックアップを展示いたしました。

東芝情報システムは、自動車・航空・宇宙機器向け電子機器や医療機器向けのディスプレイパネル開発などで実績のある米国DiSTI社の販売代理店として、高品質なユーザーインターフェースを効率よく開発できる、組込みシステム向けUI開発ツール 「GL Studio®」をご紹介しました。GL StudioはAdobe PhotoshopやAUTODESK 3ds MaxなどでデザインしたUIパーツを、簡単にインポートし、配置・動作設計できる、柔軟な開発環境(デザインツール)と、安全性能に関わる各種の認証を取得している実行環境(ランタイムライブラリ)が特長です。

東芝電力検査サービスは、自動車製造の現場で活躍する2種の3D超音波検査装置「Matrixeye™VI」を出展。
3D超音波検査はX線検査装置等にくらべて小型・軽量で取り扱いが簡単な上、対象物を平面のみではなく深度も備えた立体画像として捉えることができるので、様々な製品内部を非破壊で高精度・高解像度にて検査することが可能です。
スキャナータイプ(一般探傷)の展示では、アクリル板内部に異なる深さで埋め込まれた「TOSHIBA」ロゴを、平面形状も深度も正確に認識している様子をデモンストレーションしました。

また、スポット溶接検査用3D音波検査装置は、スポット溶接の内部の様子を超音波によって高速・高精細に3次元画像化し、溶接部分のナゲットサイズが適切であるかどうかを瞬時に計測、良否判定ができることを、溶接された金属板に実際にプローブを当てて体験いただく展示をいたしました。これまでに、鉄道のレールや飛行機部品、船舶といった高い安全性を求められる製造現場で活用されている東芝3D音波検査装置であれば、自動車製造においても、非破壊・高速・正確な判定によって、抜き取りではなく全数検査も可能になります。

東芝 電池事業部は、東芝二次電池「SCiB™」をラインナップ。負極にチタン酸リチウムを採用し、急速充電・高入出力・長寿命・高い安全性を誇るSCiB™は、自動車や産業機器の燃費改善に貢献しています。
今回展示の12V電池パック(カルソニックカンセイ様製)は、日産様、三菱自動車様の新型軽自動車に新たに採用されました。また24V電池パックのSAP24(2020年量産化予定)はバス・トラックなどの大型車のエンジン始動や電装部品電源として鉛蓄電池からの置き換えに、48V電池パック(参考出展)は欧州で将来主流になるマイルドハイブリッド車への市場拡大を目指しています。

東芝デジタルソリューションズの出展からは、「音響センサを用いた異常検知ソリューション」をご紹介します。
モーターの駆動音を音響センサにより非接触で収集し、東芝独自の音響解析技術と機械学習を活用して状態を診断。従来はベテラン技術者が行っていた官能テストをデジタル化し、突発異常や経年劣化異常を検知することが可能です。東芝汎用エンジンによりノイズを除去し、製品そのものの発する音を集音・分析します。

「分散・連成シミュレーションプラットフォーム」は、モデルベース開発において様々なメーカーのECUをネットワーク上でテストできる仮想バスシミュレーションです。自動車には、多い場合で100個近いECU(電子制御装置)が搭載されており、開発段階でそれらの実機を集めてテストを行うのは大変な工数になる上、メーカーの情報公開による制限も加わります。このシミュレーションプラットフォームなら、必要なデータだけを各社がネットワークで共有するので、離れた拠点でもやり取りが可能、また通信仕様書からモデル接続ブリッジを自動生成できるため、ワンタッチでモデルを接続可能です。開発工程の早い段階で全体テストができるので、ハードウェア開発での手戻りを防ぐなど、開発工数や費用を大幅に軽減できます。

東芝マテリアルは自動車産業に関連した2点の製品を展示しました。
世界最高レベルの高放熱・高強度を誇るSIN基板は、窒化ケイ素を粉末の状態からコントロールする東芝独自の技術により、超音波(US)接合が可能で、また基板に穴を開けてネジ止めをしても割れないほどの高強度を実現しました。この高強度特性により、高熱伝導材でなおかつ薄化が可能な素材が実現し、ハイブリッド車や電気自動車のパワーコントロールユニットの半導体冷却部品を、既存設計のまま樹脂から窒化ケイ素基板に置き換えるだけで2倍の放熱効果を得られます。
また、マツダランプのタングステンフィラメントを発端として長年にわたるタングステン材料に関する知見を活かして、酸化タングステンの組成を変えることで電子伝導性とLiイオン拡散性に優れた蓄電デバイス用電極材料を開発しました。この材料をもちいることで、従来のデバイスと比較して約2~3倍のパワー密度を有する蓄電デバイスを実現できます。アイドリングストップ車始動時のキャパシタの置き換えや、高いエネルギー回生能力を生かした市場を探ります。

これからも、先進的な自動車の未来を開拓する東芝グループにご期待ください。