ニュースリリース
令和2年度気候変動アクション環境大臣表彰の受賞について
排ガスや大気中のCO2を再生可能エネルギーで有価物に変換するCO2資源化技術と、高速かつ3次元で気象現象を観測できる世界初の気象レーダで受賞株式会社 東芝
東芝インフラシステムズ株式会社
このたび、株式会社東芝の『人工光合成技術を活用したCO2資源化技術の開発』ならびに、東芝インフラシステムズ株式会社(以下、TISS)の『マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ「MP-PAWR」による気象防災への取組み』の2件が、環境省が主催する「令和2年度気候変動アクション環境大臣表彰*1」を受賞しました。
「気候変動アクション環境大臣表彰」は、1998年に創設された「地球温暖化防止活動環境大臣表彰」が、昨今の気候変動対策の動向等を踏まえて今年度リニューアルされたものです。気候変動の緩和及び気候変動への適応に関し顕著な功績のあった個人又は団体を称える賞で、開発・製品化部門、先進導入・積極実践部門、普及・促進部門の3部門で構成されています。今回の2件はいずれも開発・製品化部門での受賞となります。
■東芝『人工光合成技術を活用したCO2資源化技術の開発』
国内外の温室効果ガスの排出を低減する優れた技術の開発によりその製品化を進めたことに関する功績を評する「開発・製品化部門(緩和分野)」において受賞しました。
概要:
CO2排出量の大幅削減のためには、再生可能エネルギーの導入拡大に加え、製鉄、化学などの産業部門から排出されるCO2量の削減が求められています。近年、CO2の資源化技術として種々の技術開発が進められていますが、処理速度が低く、大量のCO2を処理するには広大な処理施設が必要となるなど実用化に課題がありました。当社では、従来から開発を進めてきた人工光合成技術をベースとして、触媒電極の三相界面制御技術、多孔質触媒電極技術などのブレークスルーにより従来比約450倍の高スループット処理が可能なCO2電解セルを開発しました。セルの積層化技術を適用することで、100万倍以上と、トンレベルの処理が可能となり、この点が評価されました。
展望:
本技術により排ガスや大気中のCO2を太陽光などの再生可能エネルギーを用いて、貯蔵・輸送可能な化学物質に変換する事が可能となります。これによりCO2排出を本質的に削減でき、持続可能な炭素循環社会に貢献します。
CO2資源化技術の概要および当社で開発したCO2電解セルと触媒電極
■TISS『マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ「MP-PAWR」による気象防災への取組み』
既に起こりつつある気候変動の影響による国内外の被害を回避又は低減する優れた適応策の先進的導入及び積極的実践等を評する、「開発・製品化部門(適応分野)」において受賞しました。
概要:
TISSは、内閣府が主導するSIP*2第1期「レジリエントな防災・減災機能の強化」の施策に、研究グループの一員としてプロジェクトに参画し、近年、社会問題となっている、ゲリラ豪雨のような局地的大雨に起因する河川の増水や、都市域の浸水、土砂災害など、多種多様な災害への対策に向けて、高速かつ3次元で気象現象を観測できる世界初*3となる実用型「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(以下、MP-PAWR)」の開発と、観測データを利用した局地的大雨予測などの研究開発を推進してきました。
MP-PAWRは、既存のフェーズドアレイ気象レーダと同様に、30秒~1分で雨雲の3次元立体構造を観測できるだけでなく、従来のパラボラ型のマルチパラメータ気象レーダが持つ高精度な降水量の観測機能を備えることで、『迅速な雨雲把握』と『正確な雨量観測』という2つの目的を1つのレーダで実現します。このMP-PAWRで観測した上空雨量が水防活動の事前情報として有効であることなど、将来の防災・減災の術となることが期待され、取組みが評価されました。
展望:
今後も、私たちの日常生活の安心・安全の確保を目指し、IoT(Internet of Things)化が想定される河川水門や下水ポンプなどをはじめとする、社会インフラ設備の制御の一助となるよう、クラウドサービスを活用した情報提供システムや、MP-PAWRの観測データに基づくソリューションを提供していきます。
MP-PAWR 雨雲の3次元観測結果
東芝グループは、インフラサービスカンパニーとして社会に提供する信頼性の高いサービスと最先端の技術で、気候変動をはじめとするさまざまな社会課題解決に貢献し、さらなる企業価値向上を図ります。企業として持続的に発展するため、倫理的で透明性のある経営基盤の構築にむけて、E(環境)S(社会)G(ガバナンス)の強化に努め、さまざまなステークホルダーの皆様と連携しながら、豊かな価値を創造し、提供します。そして、SDGsの特に10のゴールに注力し、各ゴールに対するポジティブ・インパクトの最大化とネガティブ・インパクトの最小化に取り組み、すべての企業活動を通じてSDGs達成に貢献します。
*1 気候変動アクション環境大臣表彰
環境省では、地球温暖化対策推進の一環として、地球温暖化防止に顕著な功績のあった個人又は団体をたたえるため、「地球温暖化防止活動環境大臣表彰」を行っている。今年度より実施内容を引き継ぎ、昨今の社会における気候変動対策の動向等を踏まえ、「気候変動アクション環境大臣表彰」にリニューアルされた。
*2 SIP
戦略的イノベーション創造プログラム。科学技術分野におけるイノベーションを実現するために、内閣府/総合科学技術・イノベーション会議が2014年に創設した施策。
*3 世界初
水平偏波と垂直偏波を同時に送受信する二重偏波機能を有し、10方向以上を同時に観測可能なDBF(デジタル・ビーム・フォーミング)のリアルタイム処理機能を搭載した気象観測専用のフェーズドアレイレーダとして。